区分所有3度目の法改正に向けて⑥

 法制研は、これまでに10回(今年117日)の研究会を重ねている。第8回の法制研で取り上げられたテーマは「区分所有建物の管理のための新たな財産管理制度」で、この点の精査が期待されたが、どうもその後、復旧・建替え問題が俎上に登っているようだ。所有者不明土地問題もさることながら所有者不明状態に陥った専有部分の把握、対処も喫緊の課題であろう(先回は思わず、地方都市に広がる「放置マンション」の爆発的普及への懸念と書いてしまったが、爆発的蔓延とすべきであった。お詫びして訂正したい)。これは区分所有法上でも吟味の上、準備すべきだ。

 さてマンションの場合、空家化→賃貸化→放置化といったことが順追って進むものではない。一挙に変わることが普通で、次から次へと新しい建物が街に登場すると空家が次から次へと増殖すると述べた。

 これは以前に当シリーズで紹介したことであるが、滞納管理費をめぐって一空家の相続問題を区分所有者の団体が解決に向け対応することは、困難は伴うものの解決策があろうかと思う。が、マンションの1、2割、半数が空家状態ともなれば、この対処の困難性はもはや区分所有者の団体の領域を超えてしまう。この点の対応は、住宅政策及び新たな立法化による対処を待つしかない。同研、法制審議会が何らかの指針、方向性の示唆することが期待なのだが。

 ところで少子高齢化の影響を受けマンション居住者の高齢化現象が顕著に進んでいる事例が見当たってきた。マンションの普及時に併せ購入した人々に移動がないとすれば、特に著しい状況を示すことは疑い無いが、これを建替え制度の拡充でのみ解決を模索するのは如何なものか。もちろん、その対応には、「区分所有関係の終了」も含まるのだろうが。これだけでは足りるまい。

 マンションに押し寄せる大波には今、居住者の高齢化に伴う認知症を患う人々の増加傾向といったことも挙げられる。日本マンション学会(鈴木克彦会長・京都橘大教授)の分科会のテーマでも継続的に議論が展開されている。この点、これまでの住まいとしてのマンションのスキームから、新たな課題が多種多彩な形で迫ってきていることが窺える。

 筆者が記者であった頃の記憶を辿ると、例えば火災保険といえば共用部分の付保が、繰上げ償還に伴って霧消してしまって問題化することがあった。今や住戸における同保険の付保が滞る事態を迎えている。

 区分所有法制におけるコンセンサスの見直し、建替え制度、復旧制度の拡充も大事であるが、既に空家防止対策への具体的指針の検討、高齢化社会の影響を顕著に受けるマンションへの対応、要介護世帯への具体的方策の検討というのも重要さを増している時期が到来している。しかも時間的猶予はない。

 では、この対応につき、どのような手立てが考えられるか。有能な管理組合は、自治会との連携を深め、緊急時の炊き出し、防災活動等様々な取組みを展開してきた。が先に挙げた項目は、いくら有能とはいえ対処しきれまい。空家対策としては火災保険への付保状況によって、終了を予定するマンションリストに計上し、終了のコンセンサスへのバックアップを行う施策、居室におけるオール電化への促進策を講じる制度等が望ましいが。喫緊の課題に対する具体策はもはや、区分所有法を超えている(つづく)。

明治学院大学法学部兼任講師・本紙客員編集委員 竹田 智志

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2022年4月号掲載)