区分所有3度目の法改正に向けて㉑

 先月8日、第9回会議が行われ、「区分所有法制に関する中間試案(案)」が明らかとなった。

 全体的な考え方としては、まず最初に1.区分所有建物の管理の円滑化を図る方策として、①集会決議の円滑化、②区分所有建物の管理に特化した財産管理制度、③共用部分の変更決議の多数決要件の緩和、④区分所有建物の管理に関する区分所有者の義務、⑤専有部分の保存・管理の円滑化、⑥共用部分等に係る請求権の行使の円滑化、⑦管理に関する事務の合理化、⑧区分所有建物が全部滅失した場合における敷地等の管理の円滑化等が挙げられている。

 次に、2.区分所有建物の再生の円滑化を図る方策として、①建替えを円滑化するための仕組み、②多数決による区分所有建物の再生、区分所有関係の解消、3.団地の管理・再生の円滑化を図る方策として、①団地内建物の全部または一部が全部滅失した場合における団地の管理の円滑化、②団地内建物の建替えの円滑化、③団地内建物・敷地の一括売却、④団地の敷地の分割等、最後に、4.被災区分所有建物の再生の円滑化を図る方策では、①被災した区分所有建物の再建等に関する多数決要件の緩和、②大規模一部滅失字の決議可能期間の延長等々である。実に膨大な領域に及ぶ改正となりそうだ。

 そして時系列的には、当該中間試案(案)を一部修正の上、中間試案として取りまとめ、パブリックコメントを実施、再度審議の上、法案に至るというのが大体の流れだろう。

 諮問の際にも見られたことだが、マンションを取り巻く「二つの老い」問題は、相当に大きく高い「壁」である。対処するためには区分所有法のみの領域ではない。区分所有者はもちろん関係する団体、個人が共通の問題意識を持ちながら、当たっていくしかないように思われる。しかも人口減少社会の中で。さて昨年10月にスタートした審議会もいよいよ佳境を迎える時期が到来してきたようだ。

 ところで、当該審議会とほぼ歩調を併せるように国土交通省所管の「今後のマンション政策のあり方に関する検討会」(座長:浅見泰司東京大学大学院工学系研究科教授)もまた、とりまとめ(案)の作成にかかりつつあるようだ。

 こちらは、マンションをめぐる現状の把握、課題点の整理を踏まえ、現時点で考えられる政策の方向性をマンションション政策全般に係る大綱としてまとめ上げようというもの。(1)管理の適正化という点では、管理不全マンションへの対応、管理組合役員の担い手不足、マンションの長寿命化の推進、適切な修繕工事の実施、定期借地権マンションの評価、大規模マンション特有の課題等の把握を進めている。

 また、(2)建替え等の円滑化では、住戸面積基準に伴う保留床確保にあたっての制約、建替え事業における建築規制に基づく制約、非現地への住み替えの円滑化、区分所有関係の解消、区分所有建物の再生に関する事業手続きの整備等を行うとしている。

 同検討会でも取り上げた課題・議論の内容は広く周知。国交省のH Pで公開後、意見を募集する計画だ(つづく)。

区分所有者の責務(国交省HPより)

明治学院大学法学部兼任講師・本紙客員編集委員 竹田 智志

集合住宅管理新聞「アメニティ」2023年7月号掲載