法律Q&A 区分所有法改正で今後どうなるのでしょうか(2024年1月号掲載)

 区分所有法の改正が議論されているというニュースを見ました。いつ頃改正されるのですか。また、どのような改正がなされるのでしょうか。

 区分所有法が改正されることは法務省の法制審議会で議論されて令和5年6月に中間試案が示され、パブリックコメントにも付されているので改正が行われることは間違いありません。令和6年の通常国会に提出する方向で進んでいます。改正の内容は多岐に渡る予定ですが、大きな方向性としては①管理の円滑化②再生の円滑化を図ることを目的としています。

① 管理の円滑化に改正案で検討されていること

 集会決議の円滑化を図るために、調査をしても所在が不明の区分所有者については決議の分母から除外する仕組みが検討されています。

 大規模マンションでは集会の出席率が低く、合意形成が困難になっているという現状を踏まえて、欠席者を母数から除外して、出席者の多数決にする仕組みが検討されています。

 もっとも、共用部分の著しい変更、規約の改正等これまで特別決議で行われてきた事項まで少人数で決めてしまうことには反対意見もあります。

 また、共用部分の管理の円滑化のために変更決議の要件緩和が検討されています。

 区分所有法17条1項は、共用部分の変更に関して「形状又は効用の著しい変更」を伴うものは区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数決(特別決議)で決めます。規約で区分所有者数は過半数まで緩和できますが、議決権要件は規約でも緩和できません。

 大規模修繕は、多くの場合は普通決議でできますが、例えば、耐震補強工事をするために基本的な構造部分を改変する場合や階段室をエレベーターにするなどの工事での合意形成は困難です。

 そのため、決議要件の緩和が検討されていますが、どこまで要件を緩和するのかは議論が固まっていません。

 割合を3分の2以上に引き下げる案、一定の年数を経過した建物について3分の2以上又は過半数に引き下げる案、外壁崩落のおそれなど安全性に問題がある一定の要件を満たす建物について3分の2又は過半数に引き下げる案などが検討されています。

 また、専有部分の工事を伴う配管の全面更新が多数決でできるのかは現行法では明確でありません。そこで、これを一定の多数決で行える制度が検討されています。

② 区分所有建物の再生の円滑化で検討されていること

(1)建替え決議の要件の緩和

 区分所有法62条1項は、建替え決議は区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数決で決めるとしていますが、建替えの必要性があってもこの要件を充足することは容易でありません。そこでこの要件の緩和が検討されていますが、どこまで要件を緩和するのかは議論が固まっていません。

 割合を単純に4分の3ないし3分の2に引き下げる案、一定の年数を経過した建物について4分の3ないし3分の2に引き下げる案、耐震性不足など安全性に問題のある一定の要件を満たす建物について4分の3ないし3分の2に引き下げる案などが検討されています。

(2)一棟リノベーションの検討

 既存建物の構造駆体を維持しながら、一棟全体をスケルトン状態にして、玄関や配管等の共用部分のみならず専有部分も更新する、所謂「一棟リノベーション工事」があります。しかし、現行の区分所有法では、共用部分の変更について特別決議が必要になることに加えて、専有部分の工事に関しては区分所有者全員の同意が必要となりますので、建替えよりも要件が厳しくなります。

 そこで、建替え決議と同様に多数決決議によって一棟リノベーション工事を可能とする仕組みが検討されています。

法律相談会専門相談員 弁護士 石川 貴康

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2024年1月号掲載)