設計監理方式による大規模修繕工事[設計コンサルタントの業務と役割]3/6(2026年3月号掲載)
大規模修繕工事における設計コンサルタントの主な業務は、調査診断・修繕設計・施工者選定支援・工事監理である。状況によってはこれに長期修繕計画の策定が加わることもある。これらについて業務内容とその役割について説明する。
■調査診断
マンションの現状・劣化状況を現地で調査、管理組合保管の竣工図書や書類・図面・修繕履歴等を調べて全体を把握する。
調査の内容としては、新築時竣工図書や各種報告書・修繕履歴などの書類調査、現地目視・打診・触診などの現地調査、外壁塗膜などの付着力・シーリングや防水剤の切取り試験などの物理的調査、居住者・区分所有者へのアンケート調査など多岐にわたるが、予備調査により設計コンサルタントが現状を概略把握し、適切な調査項目・内容を検討し、詳細を管理組合と協議して決める。
調査項目・内容は個々の劣化状況と工事目的等を鑑みて、過不足無く適切に設定する事が肝要である。往々にして、調査報告書の見栄えを良くするためだけで意味の乏しい調査もあり、特に形式的で不要な調査は避けるべきである。
これら調査結果を元に管理組合と協議検討の上で、適切な大規模修繕工事の概要(基本計画)とする。この中には単なる修繕以外に、改良工事なども考えられ、特に高経年マンションではグレードアップ的内容も期待される。
■修繕設計
調査診断の結果(基本計画)に基づき、工事実施に必要な仕様書・図面・予算書等の設計図書を作成する。(実施設計)
仕様書では、仮設・躯体補修・防水・塗装などの工事項目毎に工事の内容・材料・工法について仕様を規定する。
図面は、修繕前後の平面・立面図や仕様書では表現が難しい事項に関して詳細図などを作成する。
予算書は、仕様書に従った工事項目毎に修繕部分の数量を積算し、設計者の判断する単価計上による設計予算書を作成する。最終的には、管理組合予算との調整を行い、予備費を含めて工事予算としてまとめる。
■施工者選定支援
管理組合が行う適切な工事施工者(会社)の選定を支援する。マンションの場合は、前回に記載の「見積合せ」にて選定するのが一般的である。 見積参加者の資格要件設定・公募手続き・見積依頼・一次~最終選考等について比較表の作成や連絡などの事務処理から専門的助言までを行い、管理組合を支援する。
各工事会社へ見積依頼する際には、設計図書を配布する。工事予算書は、表中の金額部分をマスキング、項目・仕様・数量を残した「修繕項目数量書」に加工して配付する。工事会社はこれにそれぞれの金額を記載することにより、純粋に工事金額の比較が可能となる。
これらを適切かつ公正に実施して施工者の選定を支援する。
■工事監理
工事の施工現場で品質・工程・予算が適切に行われるよう工事施工者を指導、随時確認・検査を行い、工事終了時には工事費の増減精算を行う。
通常、工事監理は設計者が行うが、これは単に設計意図を施工者に的確に伝えるだけではなく、調査診断から修繕設計に至る過程を熟知している事が重要だからである。
特に改修工事においては、工事の進展により想定外の事態や現場状況が判明する事があり、設計とは異なる材料・工法を検討する必要が発生する。工事の進行上早急に判断が必要な場合も多く、当初の調査から設計に携わる者でなければ適切な判断が困難な場合も多い。
■その他支援業務と役割
設計コンサルタントはこれら主要業務に付随した多くの管理組合活動の支援を行う。工事に関する広報資料の作成や住民説明会や報告会にて説明等を行ったり、工事実施に必要な総会承認を得るための議案書・説明資料の作成等も設計コンサルタント業務の一部として行っている事が多い。
これらの業務を通じて設計コンサルタントの使命は『管理組合の正当な権利を守る』が重要な役割である。建築設計事務所の専門家としての業務や技術的アドバイスは当然であるが、素人集団としての管理組合を適切に支援することが重要な役割である。
修繕工事というフィールドの中で工事会社のプロを相手に素人集団である管理組合が対抗するのは難しく、往々にして工事会社のいいようにされる事も懸念される。工事会社主導の「設計施工方式」では得られない管理組合側のプロが必要である。特に施工者選定と工事監理においては施主である管理組合の側に立って業務する設計コンサルタントの存在が大きく「設計監理方式」が適切である所以である。(つづく)
一般社団法人 クリーンコンサルタント連合会 会長 柴田幸夫(2026年3月号掲載)