設計監理方式による大規模修繕工事[コンサルタントが持つべき心得]4/6(2026年4月号掲載)

 大規模修繕工事などのマンション改修や維持保全に、一部の設計事務所が積極的に関わるようになってから40年以上を経過している。それまでは一般的に新築工事を主業務としていた「一級建築士設計事務所」が、ほんの一部ではあったがマンション管理組合の改修工事を主な業務として行うようになった。この頃がマンション大規模修繕工事の「設計監理方式」採用の本格的始まりと考えられる。

 その先進的活動の中には新築時の瑕疵問題とも取り組んでいた事もあり、管理組合団体などの信頼を得、設計事務所が「設計コンサルタント」として普及するきっかけとなった。これら管理組合をサポートする経験の中でマンションの諸問題を学ぶ事により、コンサルタントが持つべき基本的な「心得」として、次にあげる五点が肝要と考えられた。

 それは「公明正大」に業務を行い管理組合の信頼を得、「柔軟な対応」により個々の管理組合それぞれに合った対応で、「多面的サポート」により建築関係以外の諸問題にも積極的に対処し、「長期的視野」でマンションの経済性と長寿命化を図り、管理組合の「正当な権利を守る」ことはコンサルタントの真の使命と考えられる。

■公明正大

 区分所有者全員が同等の権利を持つマンションにおいての管理組合運営は、公明正大でなければならない。それには情報公開と説明責任を果たす事が重要となる。管理組合をサポートするコンサルタントもこれを前提として業務を行わなければならない。

 業務の節目毎に行う説明会・報告会や広報、これらを管理組合と連携して正確な情報を適切に発信する。特に設計監理の業務報酬についての見積はその業務内容を的確・詳細に説明の上で、国交省告示による業務報酬基準などで説明する。又、工事費用については、一般公募に始まり競争見積を経て面接ヒアリングによる決定経過とそれぞれにおける選考内容・理由を十分に示す。

■柔軟な対応

 個々のマンションにおいては、それぞれが所在地域・住民・経年数や過去の経緯などが異なり、管理組合の内部事情は千差万別である。固定観念にとらわれず、これらに配慮した柔軟な対応が必要となる。

 管理組合の規約(細則など)に則しながら、それまでの運営方法・実績を管理組合と確認して、それらと齟齬の無いよう配慮する。
 往々にしてコンサルタント側の考え方や方針・経験などを優先して拘りがちであるが、可能な限り管理組合の意向や経緯を尊重して対応する。

■多面的サポート

 業務を単に建築技術的側面だけで行うのではなく、組合内の合意形成や区分所有法・管理規約等の諸問題も含めた多面的なサポートを行う。

 業務に直接関係する支援として、総会承認事項の確認や議案作成や総会での議案説明の補助などがある。建物などの維持保全に関する対策から、長期修繕計画につながる将来の改善策まで、出来るだけ管理組合の疑問や希望に答えられる事が望まれる。

 さらに、区分所有者が行う専有部分室内の工事に関する事、専用使用共用部分の使い方、共用部分の生活上の問題など多岐にわたる。管理会社が入っている場合には、そことの緊密な連絡協議による調整も肝要となる。

■長期的視野

 マンションは適切に維持保全されるならば、長く使い続けられるもので、少なくとも百年程度は使い続けられるであろう。そのような認識でコンサルタント業務を行い、長期的視野に立ったアドバイスが必要となる。

 それぞれの工事仕様設定の際には、コストと同時に耐久性の向上を目指しながらコストバランスに配慮することによりマンション全体の長寿命化を図る等々。

 長期修繕計画の意図・内容を十分理解し、管理組合の意向を汲みながら、より長期的維持保全に資するよう業務することが肝要である。

■正当な権利を守る

 特定の利害とは一線を画した専業設計事務所で、主治医や顧問弁護士のように管理組合の正当な権利を守る立場で管理組合をサポートする。
 そうでなければ、工事施工者選定や工事の追加・変更に伴う増減精算においては金銭的に、工事監理の際の現場確認・検査においては施工品質的に、管理組合の正当な権利を阻害する恐れがある。

 昨今、問題となっている「不適切コンサルタント」などは論外である。工事会社や管理会社など、時には管理組合内の一部の理事や区分所有者との癒着は管理組合の権利を阻害するもので、あってはならない。(つづく)

一般社団法人 クリーンコンサルタント連合会 会長 柴田幸夫(2026年4月号掲載)