建物劣化調査の見積りが各社異なり迷うが… (2005年12月号掲載)

大規模修繕工事のための建物劣化調査の見積を数社から入手しましたが、調査項目や調査費の算出方法が異なり、どの会社に依頼したら良いか迷っています。

 

建物の劣化調査の調査項目や調査費は、調査目的により様々な考え方がありますが、マンションの大規模修繕工事のために行う建物劣化調査の場合は、大規模修繕工事の必要性についての合意形成のために居住者・管理組合員に説明する資料、修繕設計者が修繕項目・修繕仕様等を検討するための資料を得る目的で行われます。

建物調査は、主に目視(バルコニー内立入調査を含む)により屋根、バルコニー、開放廊下、外壁等の建物各部位や外壁・鉄部塗装、シーリング、屋根防水等の材料等の劣化・不具合状況と改修工事の必要性を調査します。必要に応じて各種材料(塗装・防水材等)の物理的劣化状況を調査するため、機器の使用や一部材料の切取りを行う場合があります。又、居住者へのアンケート調査を行い、バルコニー内等の劣化・不具合状況、住戸内への漏水の有無、給排気・換気等の不具合、改良・改善の希望について調査します。

調査会社の提案等により、ひび割れや錆鉄筋露出、不具合の状況の位置を図面に記入し、数量を算出する場合があります。このような調査が必要かどうかは、検討が必要です。

調査費の算出方法は、国土交通省告示1206号により建築士事務所の報酬の算出基準として、業務担当者の1日当りの人件費と経費、技術料を、業務に必要な日数をもとに算出する方法があります。例えば、年収700万円で年間240日働くと仮定すると、1日当りの人件費は約29000円で経費は会社の規模等により異なりますが、人件費の1.0~1.5倍程度です。これらを踏まえて、見積書の内容等について説明を受けて判断されることが望ましいと思われます。

回答者:NPO日住協協力技術者
一級建築士 近藤武志
(2005年12月号掲載)

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