建物Q&A 大規模修繕工事のアンケートは賃借人には配布不要か?(2025年10月号掲載)

 大規模修繕工事が計画され、現在設計コンサルタントによる建物劣化調査中です。調査の一環で居住者アンケートが実施されています。調査員が随時進入できないバルコニー等の共用部で専用使用されている部分の劣化状況や大規模修繕での修繕希望事項等の設問が記載されています。

 このアンケートは全戸に配布されているため、賃借人にも同じアンケートが配られています。

 大規模修繕工事はマンションの所有者である区分所有者のために行われるべきだと思いますので、賃借人に問い合わせるべきでは無いと思います。劣化状況の設問はともかく修繕希望事項等は除外し賃借人用のアンケートは区分所有者用と別にすべきだと思います。

 他のマンションでもこのようなアンケートが行われているのでしょうか?

 大規模修繕設計の際に建物劣化調査が行われ、目視調査・物性調査(目視では判らない塗装等の付着力やコンクリート中性化深度・建材内のアスベスト含有の有無等の機器を使っての調査)・居住者アンケートが一般的な調査項目です。

 その中の居住者アンケートは全戸対象に行い、賃貸住戸は賃借人及び賃貸人(外部オーナー)共にアンケート用紙を配布します。

 区分所有者の建物なので、賃借人は除外すべきとの意見も時々聞かれますが、賃借人も当該マンションに実際に住み続けている人たちで、そのマンションの不具合箇所や居住性の要改善箇所の感想意見は、マンションの修繕上貴重な意見ですので、賃借人には劣化状況も修繕希望事項も書いてもらいます。尚、外部オーナーは劣化状況は判断出来ないので、改善希望事項等判る範囲の記載をお願いしています。

 借家なので自分には関係無いとアンケートに回答してくれない賃借人もいますが、丁寧に不具合状況や要改善事項を回答してくれる賃借人はマンション修繕上貴重な方々で、除外ではなく歓迎すべき意見だと考えます。

NPO日住協協力技術者 一級建築士 山田 俊二

集合住宅管理新聞「アメニティ」2025年10月号掲載