
建物Q&A 大規模修繕工事の談合を阻止する方法は無いのでしょうか?(2025年8月号掲載)
Q
現在大規模修繕工事を計画していますが、最近、新聞などで大規模修繕工事の談合問題が頻繁に記事になっています。談合によって工事費を高額で受注しようということです。昨年あらゆる工事費が値上がりしたとのことで、修繕積立金が改定したばかりなのに、更なる工事費の上昇では、積立金では工事費が賄えなくなります。
談合を阻止する方法は無いのでしょうか?
A
大規模修繕工事に関わる談合に関して公正取引委員会が30社に立入検査を実施しています。その内建設会社17社、設計コンサルタントが1社(資料提供要請)がマスコミに社名が公表されています。
社名が公表された会社はいずれも実績が多く、多くのマンションで過去に工事を依頼した会社が含まれています。
社名が公表されたのは工事会社が大半ですが、談合は工事会社だけでは成立しません。一般公募された工事に参加している工事会社の全社を相互に把握するのは困難であり、その中から受注予定者(チャンピオン)が他の参加会社の合意を得る事は更に困難になります。談合が成立するには、参加会社を把握できる発注側に談合をほう助する者が必要になります。その役を演じるのが「数年前に提言された不適切コンサルタント」や不適切管理会社、不適切管理組合員(なりすまし役員を含む)です。
談合ほう助者は見積依頼の際に息の掛かった施工会社に声をかけ見積へ応募させ、談合仲間以外の会社が応募したら色々問題点を上げ連ねて排除し、談合仲間だけに見積もりをさせ、受注予定者が高額工事費で落札させます。施工会社が決まったら、その会社からバックマージを受け取る仕組みです。数年前の不適切コンサルタント問題提言後、不適切な行為は減少したのだろうと思っていましたが、いまだ暗躍しているようです。
談合をほう助する者には不適切コンサルタントばかりではなく、最近問題になっている「なりすまし管理組合委員」や、工事会社がマンションの住戸を買い、社員を住まわせ、合法的に管理組合の理事・委員等になり修繕の専門家であるとして委員会などをリードするケースがあるようです。
このような談合問題に巻き込まれないようにするには、不適切コンサルタントにコンサルを依頼しないことが第1です。大規模修繕工事を適切に進めるには設計コンサルタントは必須ですので、不適切なコンサルを一切行わないクリーンなコンサルタントに依頼する事が最善策です。クリーンなコンサルタントを選出するには、国土交通省が周知している(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センターや(公財)マンション管理センター等に相談したり、NPO日本住宅管理組合協議会や近隣の管理組合から情報を得る事です。また、なりすまし委員や法人所有住戸からの委員には十分気を付けなければなりません。
NPO日住協協力技術者 一級建築士 山田 俊二
(2025年8月号掲載)