制度を知って安心して大規模修繕工事できる環境を

 住宅リフォーム市場が拡大を続けている。その一方で、「どの業者を選べばいいのか」「リフォーム価格が適正かわからない」等、リフォームを巡るトラブル等も増えてきた。そこで国土交通省は、昨年9月「住宅リフォーム事業者団体登録制度」を創設し、安心してリフォームできる環境整備に努めている。(注 ここでいう「リフォーム」とは、一般住宅で行われるリフォームから、マンションの大規模修繕工事まで含まれるが、本稿ではマンションの大規模修繕工事を前提とする。)

国がリフォーム事業者団体を登録

 同制度は、一定の要件を満たす住宅リフォーム事業者団体を国が登録することで、安心して消費者がリフォームを行うことのできる環境を整備することを目的に創設され、現在、一般社団法人(略称=一社)マンション計画修繕施工協会、(同)日本住宅リフォーム産業協会、日本木造住宅耐震補強事業者協同組合、(同)リノベーション住宅推進協議会、(同)ベターライフリフォーム協会、(同)日本塗装工業会の6団体が登録されている(登録要件等は別表1を参照)。

瑕疵保険加入が原則義務化に

 同制度登録のリフォーム事業者団体は、団体構成員への研修を行うことで、適確かつ円滑にリフォーム事業を行う人材を育成するとともに、消費者からの相談に応じる体制整備や情報提供を行うことが求められる。
 また同制度では、一定金額以上(大規模修繕工事の場合、戸数×100万円か総額1億円のいずれか低い額)の工事を行う場合、瑕疵保険への加入が原則義務化された。

瑕疵保険とは

 保険と聞いて「うちのマンションでは損害保険に入っている」と思われた方もいるだろうが、瑕疵保険と損害保険は違うものである。
 瑕疵保険は、工事後に施工ミス等による不具合(例・タイルの剥落)が起きた場合、保険で工事会社が不具合を補修する。また保険期間中に工事会社が倒産した場合、管理組合が保険会社に直接保険金を請求し、補修工事に当てる。このとき、管理組合が保険金を管理することに支障がある場合、直接補修工事を行う工事会社に保険金を振り込むよう依頼することもできる(大規模修繕工事瑕疵保険概要は別表2を参照)。
 この瑕疵保険は、加入するのが管理組合ではなく、工事会社である。
 新築の場合、瑕疵保険への加入は義務化されているが、大規模修繕工事も含むリフォームでは、保険への加入は任意のため、工事会社が自ら加入しないのが実情だった。
 瑕疵保険で救済されるのは、一見工事会社のように思われるが、実際は工事を発注した管理組合が救済される。

消費者も知ることが必要

 同制度は、住宅リフォーム事業者団体が構成員の資質を向上させ、いわば国のお墨付きのリフォーム事業者養成を行い、それでも工事上の不具合があったときには、瑕疵保険で消費者を救済することで、安心してリフォームを行える環境を整備しようとしている。
 そのため、(1)同制度を消費者も知り、(2)同制度登録団体の工事会社をなるべく選び、(3)工事会社には工事内容に沿った補償内容で瑕疵保険に加入してもらうことが不可欠となる。

(2015年7月号掲載)