共用部分リフォームローンを利用しやすく改善 「マンションの価値向上に資する金融支援の実施協議会」が報告(2020年5月号掲載)

 今年3月、「マンションの価値向上に資する金融支援の実施協議会」が昨年度の取組報告を行った。

 同協議会は、独立行政法人住宅金融支援機構 を事務局とし、マンション管理等関係団体、民間金融機関、行政機関、有識者を参加メンバーとして、2018年度に設立した「マンションの価値向上に資する金融支援のあり方勉強会」の報告を推進するために、2019年度に設けられた。
同勉強会の報告では、マンションの価値向上にあたり、高経年マンションが抱えている課題や民間金融機関が認識している課題に対し、特に重要と考える課題として、次の「3つの課題」を挙げている。

課題1
 管理組合のガバナンス機能低下に対応する取組
課題2
 民間金融機関の参入支援に関する取組
課題3
 共用部分リフォームローンの商品性改善に関する取組

 今月は課題の中でも、昨年10月に融資条件の改正が行われた、課題3の共用部分リフォームローンの商品性改善についての動向をお伝えする。

融資利用上の課題

 同協議会では、マンション管理組合が、融資要件を満せない場合、「機構、民間も含め、実質的にどこの金融機関からも借入ができず、結果、修繕工事を断念せざるを得ない状況にある」としている。特に、融資要件のうち「修繕積立金の滞納割合が10%以内であること」等が事実上の障壁となっているものの「マンションストックの健全化の観点から金融支援の必要性が認められる」としている。

 しかし、「返済能力がない者への融資は金融機関としても貸し手責任を問われることになりかねないので、そうした点も考慮した上で滞納割合に関する基準等の融資要件の見直しを行う」とし、以下の見直しを行った(概要は表1参照)。

1 融資限度割合の引上げ
 従来、工事費の8割以内としてきた融資限度額を工事費の10割以内とした。

2 融資期間の延長((公財)マンション管理センター保証の場合)
 従来10年以内としてきた融資期間を、一定の要件を満たす工事を行う場合は20年以内とした。

3 修繕積立金滞納割合の引上げ
 従来修繕積立金の滞納割合は10%以内としてきたが、マンションの総戸数が50戸未満であること、かつ、滞納者に対して督促等を行っていることが確認できること、という要件をすべて満たしている場合は、修繕積立金の滞納割合が20%以内の場合も融資を行うこととした。また、要件を満たす管理組合の返済比率を、従来の徴収予定額の80%以内から60%以内へと緩和された。

 なお、総戸数が50戸以上の場合は、従来の条件での融資となる。
 同協議会は、今後も政府のマンション政策の方向性や、市場のニーズ等を踏まえ、制度の改善や融資要件の見直しに取り組むとしている。

融資手続きの利便性向上のツールを開発

 融資条件の見直しは、昨年10月にいち早く実施されたが、融資手続にあたり、管理組合が特に負担感が大きいと感じている借入申込書の作成についても改善が図られる。

 同協議会では、民間金融機関が個人向けの住宅ローンで導入しているように、WEB(ホームページ内の専用ページ)に表示されるナビゲーションに従って入力すれば、借入申込書が抜け漏れなく作成できる機能を導入すること等で、ローン利用時の管理組合の利便性の向上を図り、また、管理組合が融資を利用する場合の融資手続の大まかな流れや留意点(準備する書類、管理組合で必要な意思決定等)を分かりやすく説明したツールを作成するとした。

 これらのツールの作成は、2021年度のリリースを目指し、準備が進められる。

その他の取り組み

 同協議会では、マンションの規模、築年数等に応じ、「平均的な大規模修繕工事費用」、「長期修繕計画」、「必要となる修繕積立金」を、管理組合がWEB上で無料で試算できる「マンション版ライフサイクルシュミレーションツール」を今年6月末にリリースを予定するなど、様々な報告を行った(報告の詳細は、住宅金融支援機構HP、https://www.jhf.go.jp/files/400352286.pdfを参照)。※新型コロナウイルスの影響により、同ツールのリリースは9月末に変更となりました。

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2020年5月号掲載)