設計監理方式による大規模修繕工事 [工事発注方式と施工者選定] 2/6(2026年2月号掲載)
マンションの大規模修繕工事に限らず、一般的に工事を発注する方式としては二つある。一つは工事の設計と監理を設計コンサルタント(設計事務所)が担い、これとは別に工事施工を工事会社が行う「設計監理方式」と、もう一つは両方を同じ会社(一般的には工事会社)が行う「設計施工方式」である。
官公庁や大企業等で、通常は設計監理方式を採用するのが標準となっている。
■設計監理方式
大規模修繕工事における設計監理方式では、設計コンサルタントが工事内容・条件等を管理組合と協議しながら、修繕工事の設計(仕様書等作成)を行う。これに基づき工事会社へ競争見積を行い、管理組合が行う施工者選定を支援する。
競争見積の際には、見積の基準となる共通の設計図書(仕様書・図面・見積項目表等)が必要で、これにより工事費の適正な比較が出来る。
工事中は適切な品質を確保できるよう、現場で検査等を通じて施工者を指導し、さらに改修工事には必須の増減実数精算や竣工図書類の確認を行う。
このように工事会社とは別の専門家の立場で大規模修繕工事を適切・円滑に実施し、管理組合の正当な権利が守られる様に業務を行う。特に「工事業者選定」の組合支援は設計監理方式の重要な役割の一つであり、区分所有者に対して公明正大に工事を実施しなければならない管理組合にとっては最も適切な方式と考えられる。
■設計施工方式
前記設計コンサルタントの業務と修繕工事を同一の会社(多くは工事会社)が担う。契約は一括して当該会社と契約するが、実際には調査・設計等を関連会社等へ外注する場合が多い。責任施工方式と呼ぶ場合もあるが、実質的な工事上の責任は同じである。
工事監理も同一社内で行われるが、設計事務所の専門家による本来の工事監理より甘く不十分になる事が懸念される。工事中の現場状況による対応や工事終了後の補修費用などの増減精算についても管理組合側に立って適切に行われるか疑問が残る。
一般的には、設計コンサルタント費用が削減出来る事をメリットとするのは誤解で、工事費の中に含まれていると考えられる。むしろ適切な競争見積が困難な事から逆に工事費が割高となる事が懸念される。
少額・単一な工事で設計監理方式のメリットが少ない場合や管理組合の中で評判が良く信頼の置ける工事会社が有る場合以外は、原則として競争見積を含めた選定方法でなければ総会で承認を得るのは難しい。
■施工者選定
工事を行う施工会社を決める選定方法として、競争入札・見積合せ・特命の三種に分けられる。
「競争入札」は、原則として工事費総額で判断する。基本的に最安金額を提示した会社に決まるが、官公庁の場合は最低限価格を設けている。参加条件を満たす誰でもが参加できる「一般競争」と発注者側が参加者を指定する「指名競争」がある。「見積合せ」は、工事費総額を基本にして見積内容や工事会社の体制・能力などを総合的に判断して決める。「特命」は発注者側が施工者を決める(随意契約)。
管理組合の場合は、見積参加者を公募する場合が多いが、参加希望会社の内容や実績などを比較検討し、一次選考として通常は5~8社程度を選定して見積を依頼する。二次選考は見積書の内容などを比較検討し、ヒアリング(面接)を行う会社(3社程)を決め、ヒアリングの結果で最終的に1社を選定する。管理規約などで他に決まりが無い限り、このような形で施工者を決めている。
いずれの選定方法を選ぶにしても、工事会社に工事費の見積を依頼するが、複数社からの見積金額を比較するには、統一基準が必要となる。それには工事の工法・材料等を規定した仕様書や図面・見積項目書などの「設計図書」が見積の基準となり、この設計図書を作成するのが「設計コンサルタント」の重要な役割となる。
■その他の方式
施工者選定の際、よく言われる方式にVE・CM・プロポーザル・コンペ方式などが有るが、素人的には誤解している面もある。
VE方式(コスト低減の技術提案)は施工者選定の一部や選定後の価格交渉において補助的に行っている場合もあるが、専門家による適切な評価が必要である。
CM方式(工事全体について管理の補助代行者を設ける)・プロポーザル方式(技術提案により能力を評価)・コンペ方式(作品提案による設計力を評価)は、大規模修繕工事においては、特殊な場合を除き対象外と考えられる。(つづく)
一般社団法人 クリーンコンサルタント連合会 会長 柴田幸夫(2026年2月号掲載)