設計監理方式による大規模修繕工事 1/6(2026年1月号掲載)

 マンションの大規模修繕工事を行う際には通常「設計監理方式」が推奨されているが、その内容と意義が一般には十分理解されているとは言い難い。それ故、不適切コンサルタント問題などを契機にして一部には設計コンサルタントを不要とする論調や他の方式の提案等が散見される。

 このような傾向に対して10年ほど前に『不適切コンサルタント問題への提言』を公表した筆者として、あらためて「設計監理方式」の優れた重要性を理解していただくと共に昨今の新たなステージに入った不適切な状況を論じてみたいと思う。

■管理組合の特性

 マンションの維持保全を行う「管理組合」は、一般の会社と比較して、ヒエラルキーの無い平準な組織である。区分所有する面積などにより権利割合が異なるものの、管理組合に対する権利・義務は同等である。理事長といえども区分所有者としては他と同等であり、管理組合の運営についても区分所有法や管理規約に従って行わなければならず、最終的には総会承認を要する。

 このような民主的平準な組織の運営は「公明正大」に行われる必要があり、そのためには「情報公開」と「説明責任」により果たす事が肝要である。特に「大規模修繕工事」のように管理組合としては多額の費用を使い、居住者にも影響の大きい事業については、その必要性・経緯等について丁寧な説明が必要である。

 一方、区分所有者の多くはマンションの管理については全くの素人であり、管理組合の運営には専門家の助けが無ければ難しい。日常的管理運営については管理会社、特定のテーマ毎にはそれぞれの専門家の協力を得て行う。建物等の維持保全に必要な工事等の発注業務については、主に一級建築士(設計事務所)などの建築専門家(設計コンサルタント)がこれを担う事となる。

■大規模修繕工事とは

 概ね12~15年毎に行われるコンクリート等の躯体修繕を中心とした外壁仕上・防水等の基本工事について建物を全体的に行う共用部分の工事で、次のような特徴がある。

①建物全体を対象とした大規模な工事で、仮設事務所などを設けて現場監督が常駐し、建物外壁全面に足場架設を伴う。工事期間も4~6ヵ月(規模による)以上の長期間となり、バルコニーやエアコンの使用が制限されるなど居住者への影響も大きい。

②管理組合が行う工事では比較的高額な費用となり、通常は修繕積立金会計を取り崩して賄われる。
マンションの維持保全における計画修繕の中心となり、長期修繕計画においても要となる。

③1回目の大規模修繕工事の主な目的は「新築時の姿・性能に戻すこと」であり、同時に新築時の弱点を克服して経年劣化を遅らせる事も重要となる。これに比して2・3回目以降は、基本工事項目以外に金物や玄関扉・アルミサッシなどの建具改修(更新)等も対象となってくる。さらにデザインを含めた改善・改良や、高経年マンションになると「機能性向上」を含めた様々な改修工事が必要となってくる。このように工事内容は極めて多岐にわたり、個々のマンションによっても異なる内容が多くなる。

 このように「大規模修繕工事」は管理組合にとっては最大の事業であり、理事会としても最も神経を使うが、マンションの価値と将来につながる重要な事業といえる。

■工事に関わる主な業務

 マンションの大規模修繕工事に関係する主要な業務は、調査診断・修繕設計・工事監理・工事施工であるが、管理組合はこれらを担う専門家(業者)を決め、共に協力して推進して行かなければならない。これらを主体的に進めるのは管理組合の理事会であるが、多くは諮問機関として修繕委員会を設置し、ここで詳細な検討をして実質的な決定をしている。

 課題となるのは共に協力して事業を推進するパートナーとしての専門家の選定であり、ここに「設計監理方式」による重要な意義がある。設計コンサルタントは改修の建築技術的な能力を有するのが前提であるが、さらにマンションに関わる法・規約に関する知識と管理組合の運営に関するノウハウ等の素養を備え、管理組合を適切にサポート出来る事が肝要である。

一般社団法人 クリーンコンサルタント連合会 会長 柴田幸夫(2026年1月号掲載)

【発表当時の会報表紙】
『不適切コンサルタント問題への提言』は、筆者がマンションリフォーム技術協会(マルタ)の会長時に2016年会報「marta25号」にて発表した。