法律Q&A 専有部分での書道教室は規約に反するか(2026年1月号掲載)

 私達のマンションの管理規約には「区分所有者はその専有部分を専ら住宅として使用する」という規定があります。Yさんは区分所有者の1人ですが、専有部分をBさんに貸しており、Bさんは専有部分で書道教室をしています。

 このような使用方法は規約に反するので許されないと考えて良いでしょうか。

 本件と同様の問題が争われた裁判例が、東京地方裁判所令和6年6月13日判決となります。

 この裁判例では使用禁止を求められたYさんは、規約で住宅以外の使用を禁止する趣旨は、生活の平穏を保つためであるから、形式的には住居とはいえない使用方法に該当する場合であっても、生活の平穏を害するとはいえない場合は規約に違反しないと反論しました。

 裁判所は、住居以外の使用を禁止する規約には一定の合理性があることを認めた上で、区分所有者は規約に従って住居として使用すべき義務を負うとしました。また、Yさんの反論に対しても、生活の平穏の確保という目的に違反しない態様のものであれば、規約の禁止規定の適用がないとすれば違反の有無の判断基準が不明確となるから、一般的にそのような制限解釈をすることについては疑問があるとしています。

 他方で、本件では、住居目的で購入した場合でも、その後の事情によって住居としての使用が困難となることがあり得るところ、住居以外の用途で自らが使用できないことになると所有権に対する制約の程度は大きいことを指摘した上で「当初は、住居として使用する目的でその所有権を取得したが、その後のやむを得ない事情により、これを住居として使用することができなくなった場合において、その使用態様が本件禁止規定の目的を達成するための妨げにならないことが明らかであるときは、形式的には本件禁止規定に違反するとしても、これに実質的に違反するものではないとして、本件禁止規定の適用を除外する解釈(制限解釈)をすることが相当である」としました。

 その上で、書道教室の具体的な使用態様について「本件居室で開催されている書道教室は、月に4回、開催時間も1回につき3時間程度のものであり、それ以外には、本件居室はほとんど利用されていないのであるから、本件居室における使用頻度が住居として使用される場合に比して極めて少ないことは明らかである。

 また、本件居室が書道教室として利用される時間帯においても、本件居室に滞在する者は全体で7、8名であり、書道教室に参加している生徒も成人女性である上(略)同参加者は、本件居室の滞在時間の多くを、書道をして過ごしているものと推認されること等に照らせば、Bによる使用態様が本件マンションにおける生活に平穏の確保を妨げるものではないことは明らかというべきである」として、書道教室としての使用禁止を求める請求を棄却しました。

 本件裁判例は前記のように、書道教室の具体的な使用態様を丁寧に認定した上で、生活の平穏を害する事実がないことが明らかであるとして、使用禁止を棄却しており、書道教室だから規約に違反しないと単純に判断しているものではないことに留意が必要です。

 相談者の案件もマンションにおける生活の平穏が害されている事実があるか否かを検討して、これが認められるのであれば書道教室としての使用は許されないという結論も十分に考えられます。

法律相談会専門相談員 弁護士 石川 貴康 (2026年1月号掲載)