長期修繕計画と大規模修繕工事の基礎講座 5

■長期修繕計画における修繕積立金の算定方法

 修繕積立金の額の設定方法は、原則として長期修繕計画における計画期間の推定修繕工事費の累計額を、計画期間(月数)で除し、各住戸の負担割合(一般的には専有面積割合)を乗じて、月当たり戸当たりの修繕積立金の額を算定します。

 ちなみに、国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン(令和3年9月改訂)」では、修繕積立金の目安に係る計算式が例示されています。既存マンションも対象になることを想定して、すでに積み立てられた修繕積立金の残高や、専用使用料などの修繕積立金以外からの収入も加算して、目安となる額を算出する計算式に変更さています。

 

■修繕積立金の目安

 同ガイドラインでは長期修繕計画作成ガイドラインに概ね沿って実際に作成された長期修繕計画の366事例の収集・分析から、「修繕積立金の額の目安」(「平均値」と「事例の大部分が収まるような幅(事例の3分の2が包含される幅)」として、修繕積立金の目安となる専有面積(㎡)あたりの月額単価が示されています。

 マンションに機械式駐車場がある場合は、その修繕に多額の費用を要するため、修繕積立金の額への影響度合いが大きいとの観点から、機械式駐車場に係る修繕積立金を特殊要因として別に加算することも提案されています。

 ただし、修繕積立金の額が同ガイドラインで提案されている幅に収まっていないからといって、その水準が直ちに適切ではないと判断されるものではありません。

 修繕積立金の適正額は、各々のマンションの規模や形態、外装や防水の仕様、備わっている設備、経過年数などにより異なるため、一律に決めることは困難です。

 同ガイドラインに示されている修繕積立金の額はあくまでも目安となる参考値であり、マンション個々の実情に沿った長期修繕計画を作成して検討することが必要となります。

出典:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」

■長期修繕計画の検討体制

 国土交通省のマンション標準管理規約では、長期修繕計画と修繕積立金の額の変更は、総会議決事項とされています。

 長期修繕計画や修繕積立金の検討は、管理組合が主体となり取り組むことが必要ですが、発意をしてからその内容の検討とまとめに数年を要することも少なくありませんし、専門的な知識や経験も必要となります。

 1年あるいは2年程度で交代することの多い理事会だけでその検討をおこなうのは限界もありますので、理事会の諮問機関として継続性のある専門委員会を設けて、経験や知識のある区分所有者の参加を求めることが望まれます。

 また、必要に応じて適切なアドバイスをしてくれる専門家を選んで、長期修繕計画の具体的な見直し業務を委託するなど、技術的な支援を受けることも必要と考えられます。

株式会社スペースユニオン 代表取締役 奥澤健一

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2024年2月号掲載)