リビルディング・ロード⑥

 異彩さの具体的中身とは何だろう。同住宅中央部に設けられたコンビニであろうか。若い時分にお世話になった黒川和美先生(経済学)が、コンビニのパワーをこう分析して紹介してくれたことがある。

 まずは最寄りの金融機関であること。わざわざ銀行の窓口に時間を考えていく必要はなくなる。また宅配の基地にもなる。温度管理の必要があるもの等は、コンビニに預ける事で安全性が格段に向上する。店舗は小規模ながら文字通りコンビニエンスなのだと。

   また、当シリーズの前任者である松本恭治先生(公衆衛生学)は、コンビニが人の集まる場所にある事で死角を防ぐことができるとする。ただあるだけで安全性が向上するのだと。例えばコンビニ前の公園を、コンビニの中から大人の目が配られていると、それは監視の役目を果たすというのだ。

  筆者がかつて歩いた住宅団地の商店街は今や、シャッター街と化し死角となってしまう傾向が強い中で、コンビニが違う形で街区を支えるというわけだ。もちろん、デメリットも伴う訳だろうから、コミュニティを前提とした住まい手側の議論は重要さを増す。

 次に、クラインガルデン。筆者としては、都市農業への挑戦こそ今後の明るい、新しい街の原動力と期待したいところなのだが、個人の菜園と共同の菜園、そこで繰り広げられる生産と収穫は、われわれにとって最も基本的な喜びを提供してくれる唯一無二の代物だ。クラインガルデンの今後の展開こそ、かつての住宅団地では望めなかった夢の実現、彩りの源泉とも思われる。

 が異彩さはこれだけではない。これまでの住宅団地と圧倒的に違っているブリリア多摩NTの象徴とは何か。思うに、これまでの住宅団地は、それ一つで完成し、完結した感があって何処かに、ゲーテッドシティというわけではないが、いわゆる閉鎖性が横たわっていたかのように思えてならない。ところが同住宅には、それがない。丘陵地の頂にあって、周りの人々の憩いを誘うような魅力を放っている。単純・短絡な言葉で申し訳ないが、何処かに『ホッとするような開放感』が漂うのだ。これは、中央部に児童館があるからだけでもなさそうだ。

全体の配置図(同住宅マンション建替組合提供)

 この辺が、この住宅のこれまでにない隠された魅力なのかもしれない。もしかするとそれは、隠れたコンセプトで意図的に構築されたものなのだろうか。

 新しい街づくりという夢の実現が、このプロジェクトに関わった多くの人達の根底に自然に芽生えてきて、丘の上に展開したのであろう。そこには、住宅と駐車場と集会所を超えた、開かれた街区が確かに広がっている(つづく)。

明治学院大学兼任講師・本紙客員編集委員 竹田 智志

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2020年11月号掲載)