28.リビルディング・ロード③

 円滑化法を活用しての法定建替えとはいえ、買受指定者及び参加組合員(ディベロッパー)による事業コンセプトを踏襲したプランの実現にシフトするものが殆どで、基本的にはかのシンドロームをフォーマットにしている。そしてそれは従前の区分所有者は費用負担を極力伴わないことを前提とし、圧倒的多数による合意を形成する。この費用負担と圧倒的多数を前提とする合意形成は正に一体不可分の関係にあるとみてよく、区分所有者各々の建替え等にかかる費用負担による参加・不参加を問わないことで、実に幅広い区分所有者の支持を得ることができる。具体的には余剰容積率を最大限に活用し保留床を設け、これを販売することで建設費用を賄うという手法として登場し、継続したのだ。

 が、町田山崎住宅団地は違う。当該住宅団地は敷地面積約27700㎡。各戸専有床面積約48㎡、中層5階建て全9棟で構成されていた。同住宅団地の建替えプランは、計画当初から実現まで20年を超え、相当長期にわたって検討が重ねられた。まず最初に課題として浮上してきた点というのは、同団地が都市計画法第11条1項8号上の「一団地の住宅施設」の中に位置し、同住宅団地のみ独立し、容積率等を単独で確保できるかといったことが課題化し、自治体との折衝を重ねることで、先例を持たない課題点を斥けた。また、団地再生を建替え手法のみ採用して行うこと。従前の居住者は費用負担を極力伴わせないということを、9811月の時点で建替えに関する決議に盛り込み、建替えのみに特化していくことを予め決定していた点が特異である。

 旧町田山崎住宅団地はさらに、公法制度のクリアーに加え、特筆すべき取組みは、建替え組合が、建築主に団地の建替えを請負わせ、代金を支払う手法を採用、この代金を賄うために、旧住宅の敷地の一部(約12700㎡)を第三者に売却することと併せ、従前の区分所有者は11万円から1100万円を負担し新住戸を取得するといったことを成し遂げたというもの。同住宅団地は建替え構想の当初から、いわゆる等価交換方式を採用し従前の区分所有者の負担を極力抑えた建替え実現を目指したものの、高層・高密度化による新マンションにしても、販売の目途が立たず、事業協力者としての参加組合員が名乗りを上げられないといった現実に直面した。

旧敷地内には戸建て住宅群と公園(ウエストサイド)

 そこで登場してくるのが、事業協力者なしで建替えを実現する「自立・自主建替え」という考え方である。まず改正区分所有法上(2002年法)の建替え決議を経て、建替え円滑化法上の建替え組合の認可を得、設立させ、この組合が建築請負業者を選定・契約を行って着工に至る。建築資金は当初、住宅金融機構からの借入れ、旧敷地の半分弱を売却した分と、旧住宅団地時代の修繕積立金、区分所有者等による負担で賄うこととしていたが、同機構からの借入れは結局、行わずに済ませた。なお、同住宅団地の新名称はサンヒルズ町田山崎(町田市・305戸、高層10階建2棟・3183㎡、敷地面積13700㎡ 09年竣工)。新しい住宅は「第22回住生活月刊功労者表彰」国交省住宅局(201010)で、団体の部「国土交通大臣表彰」を受けた(つづく)。

明治学院大学法学部兼任講師・本紙客員編集委員 竹田 智志

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2020年8月号掲載)