67.空き家急増の背景/急ぐべき集合住宅対策

 近年空き家問題がテレビ・新聞に登場することが多くなったが、空き家総数の全国統計は載るものの、住宅種別、地域別空き家の偏りについては殆ど論じられない。そもそも空き家比率は1978年には7・6%だったものが、年々増加し1988年には9・4%、1998年には11・5%、2008年には13・1%とほぼ直線的に増加してきた。この勢いが続けば2038年の空き家率は18・7%になるが、人口減少が進行しつつあるから25・0%程度に達しても不思議はない。現在の空き家率の2倍近くに達したら、国民はゴーストタウンを日常的に見ることになるはずだ。毎年空き家が増加する大きな原因は非木造共同住宅の増加によるところが大きい。

 空き家の実態をたった1枚のグラフで説明することは不可能だが、話の入口として図を参照されたい。東京、秋田、福井、鹿児島の4地区のほかに全国の平均値を掲載した。東京の戸建て空き家比率は神奈川、埼玉に次いで少なく、総数では沖縄、神奈川、埼玉、愛知、山形、佐賀に次いで低い。秋田は人口減少率日本一で空き家が発生しやすい条件を持っている。福井県は総数の空き家率は多い方から9番目の県であるが、長屋と非木造共同住宅の空き家率では日本一の高さである。鹿児島県は戸建ての空き家率は第3位で、別荘が多い長野、山梨に次いでいる。戸建て住宅の単身率では日本一の高さであり高齢単身居住が多い事が戸建て空き家大量発生の原因となっている。

 都道府県別の空き家率の2008年時点の最低と最高は10・3%―20・3%(沖縄―山梨)範囲内で大差ないが、長屋12・2―38・8%(沖縄―福井)、木造共同住宅20・4―43・0%(東京―大阪)、非木造共同住宅12・2―33・8%(沖縄―福井)で地域差が大きい。

 詳細を省くが、戸建て住宅を除く各住宅は県住宅総数に占める割合が小さいほど、空き家率が高い。つまり、非木造共同住宅では全住宅に占める割合が低い福井、秋田、鹿児島で空き家率が高く、非木造住宅が占める割合が高い東京で空き家率は低くなる。長屋建てと木造共同住宅の空き家率は非木造共同住宅以上に高い。但し両者とも既に総戸数は少ないから全住宅に与える影響は少ない。近年では長屋、木造共同住宅、戸建ての数が減じて非木造共同住宅のストック量を増す傾向にある。その中で同住宅の空き家率が地方県で急速に高まっているのだから、問題は深刻だ。非木造共同の場合、戸数規模が大きいほど、高層ほど、空き家が発生してから全戸取り壊しまでに時間がかかる。区分所有の場合は、建て替えの所有者合意を得るのは大都市でも困難である。空き家率の高さは、若年層の人口減少、マイカー保有率の上昇、DIDs人口密度低下、県民所得の低下、平均的住宅面積との乖離、地方都市における中心市街地の空洞化を反映する。団塊世代が大量死亡時期に差し掛かれば戸建住宅の空き家化がさらに進行する。都市の計画的縮小が本格的課題となろう。

 ところで、現在、自治体の空き家対策は地方の小規模市町村で取り組み始められているが、中心は戸建て住宅である。集合住宅対策こそ急がなくてはならないが、戸建てに比べて問題が外に現れにくい。悪貨が良貨を挫く恐れは戸建て以上に懸念される。(つづく)

(2013年7月号掲載)
(高崎健康福祉大学教授 松本 恭治)