来春スタートの管理計画認定制度の基準に 長期修繕計画ガイドライン及び修繕積立金ガイドライン見直し

 国土交通省は、昨年6月の「マンション管理適正化法」の改正を踏まえ、「マンション管理の新制度の施行に関する検討会」を開催し、同検討会で改正法の施行に向けた検討を進め、9月末、「長期修繕計画」と「修繕積立金」のガイドラインの見直しを行った。2つのガイドラインはどの様に見直されたのだろうか。

長期修繕計画ガイドライン

計画期間が30年以上に

 望ましい計画期間について、従来は、新築マンション30年、既存マンション25年以上となっていたが、見直しでは、既存マンションも新築マンション同様、大規模修繕工事2回を含む30年以上とした。また、計画の見直しについて、従来は「一定期間ごと」と記載されていたのに対し、「一定期間(5年程度)ごと」と、具体的な期間が記載された。

修繕周期に幅を持たせて記載

 工事箇所別の修繕周期の目安について、従来より一定の幅を持たせた記載とした。
 例えば、外壁の塗装塗替えについては、12年から12~15年に、空調・換気設備の取換は、15年から13~17年などとしている。

社会的要請を踏まえた記述を追記

 築年数の古いマンションには、省エネ性能が低いものが多いことから、大規模修繕工事時に、省エネ改修工事(壁・屋上の外断熱改修工事、窓の断熱改修工事等)を実施することが、脱炭素社会の実現のみならず、各区分所有者の光熱費負担を低下させる観点からも有意義と考えられることを記載したほか、エレベーターの点検にあたり、国土交通省が2016年策定した「昇降機の適切な維持管理に関する指針」に沿って定期的に点検を行う重要性も記載された。

修繕積立金ガイドライン

 従来のガイドラインでは、その対象が新築マンションの購入予定者であったが、既存マンションの区分所有者や購入予定者でも、修繕積立金に関する基本的な知識や修繕積立金の額の目安について参照できるよう改訂された。

修繕積立金の㎡単価を更新

 修繕積立金の額の目安は、マンションの規模や築年数等に偏りが出ないよう、長期修繕計画の事例(366事例)を分析して算出している(表1参照)。特に、20階建て以上の超高層マンションは、工事費が増える傾向があるため、「地上20階以上」の目安を設けた。「地上20階未満」のマンションは、延床面積により工事費が異なる傾向が見られるため、延床面積で区分した目安を示している。ただし、事例にはばらつきが大きいため、平均値とともに、事例の大部分が収まるような範囲を示す「事例の3分の2が包含される幅」が示されている。

 

表1 計画期間全体における修繕積立金の平均額の目安

修繕積立金額算出の計算式を見直し

 修繕積立金の計算式が、従来の新築マンションのみから、既存マンションにも適用されることに鑑み、すでに積み立てられた修繕積立金の残高をもとに、修繕積立金の目安額を算出する計算式に変更された(表2参照)。
 各ガイドラインの見直しの内容は、来年4月からスタートするマンション管理計画認定制度の認定基準として用いられることが予定されている。

表2 修繕積立金算出の計算式

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2021年11月号掲載)