国の「管理計画認定制度」が4月から始まる 管理組合はこの機会に管理を見返してみよう

 管理組合の運営、経理、修繕計画などについて地方自治体がチェックする、管理計画認定制度が2022年4月から始まります。管理が行き届かずに管理不全、老朽化・スラム化し、建物の一部が崩れるなどの危険なマンションの存在などを踏まえて、地方自治体が管理状況に関与しそれらを防ぐことが認定制度の狙いです。地方自治体は、基準をクリアした管理組合を「認定」し、満たない場合は「助言」「指導」「勧告」をすることで管理の水準の底上げを見据えています。

認定制度の主眼

 管理不全を防止する観点から、管理の健康状態を観察し、問題を早期発見することに主眼が置かれています。認定は管理組合が申請をし、それを受けて地方自治体がチェックし5年毎の更新制となる見込みです。

 表の国の管理認定制度()をご覧ください。基準案は大きく5つのカテゴリーに分けられ、全部で17項目があります。

 NPO日住協の会員管理組合はすべての項目をクリアすると思いますが、いかがでしょうか。

 管理組合の運営では「監事が選任されている」などがありますが、選任されているだけでよいわけではなく、業務と会計の監査がしっかりと行われているかという観点が必要ですから、認定制度の基準を深堀りした管理が求められます。

マンションの居住価値を高めよう!

 認定制度の目的は管理基準のチェックと同時に、既存マンションの流通促進策です。

 今まで管理をきちんと実施いた管理組合でも、他のマンション等との流通市場での競争という側面には目が届いていなかったと思いますが、いかに自分たちのマンションが優れているかを意識した管理も必要になってきているのです。

 認定制度にはそのような国の思惑がありますが、認定制度があるから管理をするのではなく、従来からマンションの居住価値を高めるために主体的で自立した管理を重視して取り組んでいる管理組合は多くあります。とは言え、管理会社に丸投げしたり、長期修繕計画の見直しを行わず、故に修繕積立金が低く、それに見合った工事を行うことで、建物・設備等の劣化を招く事例は後を絶ちません。

適切な長期修繕計画・修繕積立金の不足

 長期修繕計画に入れるべき工事の漏れと、それに伴う修繕積立金の不足等により必要な修繕がなされない懸念を抱えた管理組合が散見されます。

 大規模修繕工事が可能な必要額が集まるまで工事時期を10年以上先延ばしする長期修繕計画を立てていたり、大規模修繕工事を行うが、不要不急を拡大解釈し、積立金に合わせた工事を行うといったことも見られます。どちらも、建物等の維持保全の観点からは大きな問題と言えます。

さらに必要な信頼関係

 みんなのために何かをしようという共同体意識。マンションの将来像や管理組合の運営の重要性について、区分所有者それぞれが共同体意識を持つことで大きなポジティブなエネルギーが生まれます。共同体意識は民主的で透明であることなど、信頼関係で成り立ちます。みんなで考え、少数意見にも耳を傾けて議論を尽くすなどの意識と行動が求められます。

ビジョン(将来展望)を土台にして長期修繕計画を作る

 長期修繕計画の作成や見直しに際しては、みんなで意識・価値観を整理しマンションの将来展望やあるべき姿を描き、それを軸にして長期修繕計画を策定することが大切です。もちろん、その将来展望も精度の見直しをし、それを長期修繕計画や修繕積立金に反映させ、計画修繕に係る資金計画を万全にすべきです。

 長期修繕計画を事務的・機械的に作成すると、マンションの特長的かつ重要な部位や将来のあるべき姿が反映されず、少なくともその分の資金不足となります。

 認定制度の開始を機に、管理組合は自らの管理の再点検をしてみてはいかがでしょうか。

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2021年11月号掲載)