建物Q&A 中東問題で大規模修繕工事は着手困難なのでしょうか?(2026年6月号掲載)

Q

  来年に大規模修繕工事を計画していますが、ホルムズ海峡が閉鎖され原油が輸入されず、原油を原料とする建材が製造できないため、建築工事が滞っていると耳に入ってきますが、実態はどうなのでしょうか?
 これから行う工事は着手困難なのでしょうか?また、工事費も高騰するのでしょうか?

A

 今年の2月28日に米国とイスラエルによる対イラン軍事作戦でアリー・ハーメネイー最高指導者が死亡した事を端に発し、中東の原油を運ぶ航路であるホルムズ海峡がイラン側のイスラム革命防衛隊により封鎖され、4月13日にはアメリカがイランの港口に出入りする船舶に対する逆封鎖をし、実質ホルムズ海峡の航行は不能になりました。

 このため、日本が原油輸入量の95%を依存している中東からの原油が輸入できず、原油を原料とするあらゆる製品の製造が滞っています。

 あるメーカーは在庫してあった原料や新たなる原料調達ルートを活用して製品を製造を続けていましたが、先行き品不足になる事を察知し注文が殺到し、供給が困難になり、価格も高騰しているとのことです。

 この影響を受けている大規模修繕に使用する材料は、アスファルト防水材やウレタン防水材及び防水保護塗料、溶剤系塗料、合成樹脂系水性塗料、ポリエチレン製養生材、断熱ボード材、シーリング材と大半の修繕材料が影響を受けています。価格が20~75%高騰し、供給もほとんど停滞しているようです。

 なお、原油とは関係の無い足場材は影響は出ていませんが、足場を設置しても補修材料が入荷できないため、工事を進行することができず、足場のリース代だけがかかり続けることから、工事の着手を見送っているのが実態です。

 この先これらが改善される見通しは、現在の所、見当が付きません。また、原油の流通が改善されて材料の生産が回復しても価格が中東問題発生以前の価格に戻る可能性は期待出来ません。既に工事契約をしている場合は、工期に関する念書を交わし、この先、数ヶ月毎に状況を見極め、発注者と受注者とで協議して着手時期を決める等の対策が必要です。

NPO日住協協力技術者 一級建築士 山田 俊二(2026年6月号掲載)