
法律Q&A 分譲当初の駐車場利用を優先する駐車場細則は許されるか(2025年5月号掲載)
Q
私が購入したマンションは30戸ですが、敷地内の駐車場が15台しかありません。駐車場は分譲当初に入居した人が優先的に使用しています。駐車場の使用に関する細則はありません。そこで私は管理組合に対して、ローテーション方式での駐車場の細則の制定を求めましたが、管理組合は現状の駐車場の使用方法を維持・存続する内容の駐車場細則を策定し、総会で過半数ぎりぎりで可決されてしまいました。このような細則の策定は許されるのでしょうか。
A
本問では、駐車場の使用細則の制定が、共用部分の変更または規約の制定に当たるか否かが問題となります。これに該当すれば区分所有者及び議決権の各4分の3以上による特別決議が必要となります。
他方で、区分所有法18条1項は、共用部分の管理に関する事項は集会の決議(普通決議)で行えることを規定しているので、本件駐車場細則が18条1項の共用部分の『管理』に該当すれば、普通決議で行えることになります。
本問と同様の問題が争われたのが那覇地裁平成16年3月25日の裁判例です。この裁判例では、駐車場の細則が、区分所有法30条や31条の『規約』にあたるのか、18条の『管理』の範囲内にあるのか否かについて「その規定が設けられた経緯、趣旨を踏まえて、その規定の意味合いを実質的に勘案して判断する必要があるというべきであって、例えば、その規定内容が、共用部分としての性質に反し、あるいはその性質を変更するような使用形態を規定するもの、即ち、原告の主張するとおり、特定の区分所有者に半永続的な専用使用権を与えるようなものであれば、当該規定内容は、もはや『管理』の範囲を超えるものであって、『規約』事項にあたると言わなければならない。」という判断基準を示した上で「本件細則は、従前、本件駐車場の特定の区画が先着順で駐車場契約をした特定の区分所有者らにより専用使用されてきた実態を容認し、今後も当該区画について、事実上同人らの優先的な使用態勢を維持存続することを意図して制定されたものと認められ、実質的に、特定の区分所有者に本件駐車場の特定の区画の優先的使用を認める規定内容となっていると評価することができるから、そのような優先的な使用形態を認めることは(中略)、共用部分たる駐車場としての性質に反することが明らかである。したがって、かかる優先的な使用態勢を内容とする規定事項は、区分所有法18条1項で定める共用部分の『管理』の範囲を超えるものであるといわなければならなず、同条30条1項、31条1項にいう『規約』により定めるのが相当であるといわなければならない」と判示して、細則を決議した総会の決議を無効としました。本問でも細則を可決した総会決議は無効と判断されると思います。
なお、上記裁判例は駐車場に関する細則の制定が普通決議ではできないと判断しているわけではありません。駐車場は共用部分であり、共用部分は組合員が平等に利用できる性質のものです。特定の区分所有者に独占的な利用を認めることは、共用部分の本来の性質に反するから、もはや共用部分の『管理』の範囲を逸脱していると判断したものです。共用部分の性質から逸脱していない内容を定めることは「管理」に関する事項に含まれるので、普通決議による細則で定めることはできます。
法律相談会専門相談員 弁護士 石川 貴康
集合住宅管理新聞「アメニティ」2025年5月号掲載