法律Q&A 亡くなったAさんの車が駐車場に放置 駐車料金も滞納、どのように対応したら(2023年5月号掲載)

 

 管理組合でAさんに駐車場を貸していました。Aさんは賃借人ですが、亡くなったとのことです。相続人は相続放棄したと聞きました。駐車場にAさんの車が置かれたままであり、駐車料金も滞納のままです。管理組合としてはどのように対応したら良いでしょうか。

 

 管理組合が勝手に車を処分することは「自力救済」にあたりできません。

 Aさんが生きてればAさんに対しては、駐車場の明渡しと未払い駐車料金の支払いを求める裁判を提起することなります。Aさんが亡くなり、相続人が存在していれば相続人に対して同様の裁判を行います。

 本件では相続人が相続放棄をしているようですとのことですが、相続は第1順位の相続人が放棄すると第2順位の相続人に権利が移り、第2順位の相続人も放棄すると第3順位の相続人に権利が移りますので、全ての相続人が相続放棄をしているのか確認する必要があります。

 これは相続人を調査した上で、Aさんの最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して「相続放棄・限定承認の有無照会」という手続をとります。管理組合は利害関係者(債権者)ですから、この有無照会の請求をかけることができます。

 全ての相続人が相続放棄をしており、相続人がいないことが確定した場合は、誰を被告として裁判を提起するのでしょうか。

 相続人がいない場合は民法上は利害関係人又は検察官の請求により家庭裁判所が「相続財産管理人」を選任することを原則としています。管理組合は債権者として利害関係人に該当します。

 しかし、相続財産管理人の選任申立てをする際には、裁判所によって異なりますが、約80万円~100万円位の予納金を納付を求められます。

 本件では相続財産管理人の選任申立て以外にも特別代理人を選任して、裁判手続を進めることが可能です。

 特別代理人の予納金は通常5~10万円程度です。

 本件では「亡A相続財産特別代理人弁護士●●」を被告として判決がなされます。

 判決が出たら駐車場の明渡しを求める強制執行の申立てを地方裁判所の執行官宛に行います。その際には訴訟と同様に特別代理人の選任の申立てを行います。

 なお、放置されている車両に価値がある場合は未払い駐車料金の支払いを命じる債務名義を利用して、動産競売の申立ても同時に行い、回収することが可能です。

 放置車両に価値がない場合は明渡しの断行において即日売却(備忘価格で取得できることが通常です)で取得した上で車両を処分することになります。

 法律相談会専門相談員 弁護士 石川 貴康

 2023年5月号掲載