法律Q&A  グループホームの使用(2022年7月号掲載)

 

 社会福祉法人であるAは、複数の居室を区分所有者から賃貸し、その居室において、障害者グループホームを運営しています。グループホームの利用者は普通に生活されており、住居の平穏が害されるようなことはありません。

 しかし、居室をグループホームとして使用すると、消防関係法令により、管理組合が、消防設備の設置や点検の義務を負うことになり困っています。

 Aにグループホームとしての使用を止めさせることはできますか。

 居住用マンションの管理規約では、通常、専有部分の使用を「住宅」に限定する規約が定められています。すると、障害者グループホームとしての使用が、「住宅」としての使用といえるかが問題となります。

 以前、いわゆるシェアハウス(1つの住宅を複数に区画して複数の人に貸し出す形態)が「住宅」としての使用にあたらないとした判例(東京地裁平成27年9月18日判決)をご紹介したことがあります(2017年3月号)。そこでの管理組合側の不安は、防犯防災の観点から、住居の平穏が害され、良好な住環境が確保されなくなるおそれでした。

 今回のご相談の事案では、この点は問題がありません。グループホームが、共同生活を営む住居である側面を有することは否定できませんし、グループホームとしての利用自体が、住居の平穏を害するとは言えません。

 本件で問題となるのは、グループホームの存在により、管理組合が、消防関係法令に基づいて消防設備等を設置しなければならなくなることが、管理規約上の「住宅」か否かの判断に影響を与えるかどうかです。

 ご質問と類似の事案で、大阪地裁令和4年1月20日判決は、「マンションの専有部分が住宅以外の用途に供された場合、良好な住環境が確保されなくなるおそれがあるだけでなく、本件マンションの維持管理の在り方に変動が生じ、建物又は敷地若しくは附属施設の管理に要する負担及び費用が増加するなどして、区分所有者の共同の利益が損なわれるおそれがある。」とした上で、「区分所有者又は占有者が専有部分を住宅として使用しているというためには、住宅としての平穏さが確保される態様、即ち生活の本拠として使用しているとともに、その客観的な使用の態様が,本件管理規約で予定されている建物又は敷地若しくは附属施設の管理の範囲内であることを要すると解するのが相当である。」と判断し、グループホームとしての利用がなされると、消防設備等の設置のために多額の費用の負担を余儀なくされ、また、管理規約に福祉施設等の住戸利用施設が存在することを許容することを定めた規定がないこと等から、グループホームとしての使用は、管理規約で予定されている建物又は敷地若しくは附属施設の管理の範囲外のものと認められるとして、「住宅」にあたらないとの判断をしました。

 このように判例は、良好な住環境という視点のみならず、「管理規約が予定している利用形態なのか否か」という視点から判断をしています。

 結論は事案ごとに異なりますが、判例類似の事案であれば、グループホームとしての使用は「住宅」にあたらず、グループホームとしての使用を止めさせることができると考えます。

法律相談会専門相談員 内藤 太郎

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2022年7月号掲載)