法律Q&A コミュニティ費用の徴収(2022年5月号掲載)

 

 私たちのマンションでは管理費とは別に月額100円のコミュニティ費用を徴収しています。

 組合員のAさんから「コミュニティ費用は管理組合とは別の賃借人も含めた任意団体の活動費用であり、自分はこの任意団体から脱退した。仮に管理組合が集めているのであれば、管理組合の目的に反する行為であり、いずれにしても支払う義務はない」と主張しています。

 管理組合として請求することはできないのでしょうか。

 本件と同様の内容が争われた裁判例があります(東京地方裁判所令和3年9月9日判決)。

 この裁判で組合員である原告は、組合員となったときに、管理組合とは別のコミュニティ(任意団体)へ加入するという委任契約が成立しており、コミュニティから脱退する自由があるので脱退した。コミュニティ費用はハロウィンパーティーに使われており、これは区分所有法3条に規定されている「建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行う」ためという管理組合の目的外の費用であるとして、コミュニティ費用の支払い義務がないことの確認を求めました。

 この原告の主張に対して、裁判所は、コミュニティに加入するという委任契約の成立を否定した上で、区分所有法3条に抵触するという原告の主張に関しては「管理組合は、建物、その敷地及び付属施設の管理又は使用に関する事項について、規約で定めることが可能であるところ、コミュニティ費については本件規約にも規定されている。そして、コミュニティ費が、建物、その敷地及び付属施設の管理又は使用に関する事項であるかを検討するに、コミュニティ費は主に本件パーティーに支出されているところ、被告(管理組合)の理事会は、本件パーティーについて、居住者間のコミュニティ形成に寄与し、マンションの治安の維持、ひいてはマンションの資産価値を防ぐ効果を持つものとして実施されていると評価している。」「マンションの住民(区分所有者、居住者又はその家族のみが参加可能であり、自治会ないし町会による会合とは異なるものである。)が互いに交流を持つことにより、一定の防犯効果を期待し、マンションの資産価値低下を防止するとの考え方には一定の合理性がある。

 また、少なくとも平成28年以降は、アルコールを始めとする飲食物に係る費用についてコミュニティ費用から支出しておらず、本件パーティーへの支出をもって一部住民らによる懇親会に支出するものと同視することはできない。そうすると、本件パーティーへの支出があることが想定されたとしても、コミュニティ費用の徴収は区分所有法3条に反しないというべきである。」と判示して原告主張を否定して、管理組合の主張を認めました。

 この裁判例に従う限りは、本件でのAさんの主張は認められないことになります。但し、東京地裁の裁判例の事案は、コミュニティ費用は管理費とは別に規約に規定されていること、コミュニティ費用の使途が限定さていることから懇親会の支出するものとは同視できないことを理由に挙げています。このことからアルコールを提供するなど懇親会費用であると認定されるような使い方をすれば結論が異なる可能性があることには注意が必要です。

法律相談会専門相談員 石川 貴康

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2022年5月号掲載)