建物Q&A マンション修繕業界大繁忙!(2022年4月号掲載)

 今年の秋着工での大規模修繕工事の見積会社を公募しましたが、応募会社が数社で、その内2社は予定工期の変更を希望してきました。又、前回の大規模修繕を担当した施工会社からの応募もありませんでした。数年前工事を実施した隣の同規模マンションでは公募した際、20社近い応募があり、工期の変更を希望する会社はなかったと聞いています。今マンション修繕業界に何か起きているのでしょうか?

 お察しの通り、マンション修繕関連の施工会社も設計事務所も現在大繁忙状態です。

 原因は2020年の新型コロナウィルス感染症蔓延が主因です。2020年の初めに新型コロナウィルス感染の報道がされ、初期段階では一部の地域での問題と思っていましたが、次々と感染がひろがり、著名人が感染し亡くなるという報道でウィルスへの恐怖感が高まって行きました。

 このため、修繕工事を計画していたマンションで、修繕委員会や総会等の集まりを控えたり、予定していた工事を延期したりする管理組合が増加し、大幅に修繕工事数が減少しました。2019年の感染症の発表前から修繕工事を進めていたマンションだけが工事を実施していた状況です。

 2021年になると、感染症にだんだん慣れてきて、予防対策を講じれば、修繕工事の実施は問題なさそうだという考えが多くなり2020年に工事を予定していた管理組合が着工に踏み切り、又、もともと2021年に着工を予定していた管理組合の工事と重複し、通常の倍近い工事発注数となり、2021年内だけでは捌ききれず、2022年に入ってもまだ後遺症が残存しています。この様な状況下のため、多くの施工会社が現場代理人(現場監督)不足で見積への応募を控えたり、工期の順延を希望したりしているのです。

 工事発注数が増加すると市場の原理で手間賃が上昇してきます。更にこの1~2年は新型コロナに伴う原油生産抑制による石油製品(防水材や塗料、シーリング材など)の高騰や、原産地の政情不安や生産地での電力不足に伴うアルミニューム製品(各種アルミ製金物)の高騰と輸送費の高騰があいまって、工事が1割近く高くなっていると言われています。また、新型コロナに起因し半導体不足による給湯器やハンズフリー電気錠などの納品が遅れてもいます。

 緊急性がなければ、マンション修繕工事は2~3年先送りした方が良いように思われます。

NPO日住協協力技術者 一級建築士 山田 俊二

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2022年4月号掲載)