野良猫の餌付けは「共同の利益に反する行為」管理組合は餌付けの停止を請求できる(2013年1月号掲載)

 私たちのマンションの1階に住んでいる組合員のAさんが所謂野良猫の餌付けをしてます。周囲の組合員から管理組合に苦情が来ています。管理組合の規約にはペット飼育の禁止規定がありますが、Aさんは「ペットで飼育しているわけではない。猫が可哀想だから餌を与えているだけだ」と開き直っています。管理組合としてはどのような方法が採れるでしょうか。

 まず、野良猫の餌付けが規約で禁止されているペットの飼育に該当するのかは、事案によりますが通常は野良猫の餌付けをペットの飼育であると判断するのは難しいでしょう。

 もっとも、区分所有法6条1項は「区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない」と定めており、野良猫の餌付けはこの「共同の利益に反する行為」に該当します。そして、区分所有法57条1項は「区分所有者が6条1項に規定する行為をした場合」には「その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するために必要な措置を執ることを請求できる」と規定しています。57条1項の「行為の停止」には当該行為を止めさせることだけでなく将来においてさせないことも含まれているので本件では、Aさんに対して「猫に餌を与えてはならない」という請求をすることができます。

 なお、この請求を裁判上する場合は集会(総会)での決議が必要となります。もし、前記のような裁判上の請求が認められたにも関わらず、Aさんが餌付けを止めないのであれば、区分所有法58条1項に基づいて相当期間の専有部分(居室)の使用禁止を裁判上求めることができます。

 この請求が認められると相当な期間(所有権に対する重大な侵害であることからあまり長い期間は認められないとされていますが、数年程度は認められる可能性があります)部屋を使うことができなくなりますから、かなりの効果があると思われます。
 但し、この手段をとるためには集会で特別決議(区分所有者及び議決権の各4分の3以上)と区分所有者(Aさん)に対する弁明の機会を与えることが必要となります。

 なお、筆者は過去に同様の事例で周辺の複数名の組合員個人らの代理人として、餌付けをしていた組合員に対して「慰謝料請求」をしたことがありました。
 この慰謝料請求は認められて、相手方が支払いをしなかったので、判決に基づいて、専有部分に対する強制執行を行い、最終的には相手方を当該マンションから追い出すことができました。

 このような手段をとれば前述したような集会の決議を得ることなく、手続きを進めることが可能ですが、あくまで主体は管理組合ではなく組合員個人になりますので裁判に要する費用は個人負担になります。また、必ずしも競売で追い出すことができるとは限らないことは念頭に置いておいて下さい。  野良猫の餌付けが「共同の利益に反する行為」にあたる以上は基本的には個々の組合員に任せるのではなく、管理組合が前述したような方法で対応すべきであると考えます。

回答者:法律相談会 専門相談員
弁護士・石川 貴康
(2013年1月号掲載)