建物Q&A ペアガラスには耐用期間があるのでしょうか?(2025年4月号掲載)

 10年程前に住戸のリフォームを行いました。その際に結露が酷い窓ガラスをペアガラスに取替えました。取替えた後は、硝子の結露もほとんど無く、暖房や冷房の効率が良く、エアコンを使う期間が軽減され、リフォームの効果に満足していました。

 ところが、リフォーム後約10年経過した最近、窓ガラスの結露が目立ち、エアコンの使用時間も増えてきました。ペアガラスには耐用期間があるのでしょうか?

 ペアガラスは2枚のガラス(3枚の物もある)の間に気体等を密閉して張り合わせたガラスで、はさんだ気体等をガラスより熱が伝わりにくいものを使うことにより、断熱性能を高めたものです。

 厚さ6㎜の単板ガラスの熱の伝わる割合(熱貫流率)は6W/㎡・K程度で、厚さ3㎜のガラス2枚の間に空気層厚6㎜をはさむと熱貫流率は3.4W/㎡・K程度になり、空気の代わりにアルゴンガス厚6㎜をはさむと3.0W/㎡・K程度となり、更に気体を入れず真空層厚0.2㎜にすると1.4W/㎡・K程度となりペアガラスの構成により断熱性能が変わります。また、中空層内に低放射金属膜を張り太陽光などの放射熱を軽減する機能を付加した物(Low-E複層ガラス)もあります。

 ところでペアガラスの寿命(耐用期間)ですが、ガラスなのだから割れない限り永久に耐用すると勘違いしがちですが、前記の通りガラスとガラスの間に断熱層を密閉しているので、密閉が破れるとその性能が低下してしまいます。気体を密閉するのにガラスの周囲に封着材を設けています。この封着材は合成ゴムなので経年劣化し、密閉性能が低下し、アルゴンガスや真空層が外部空気に置き換わり断熱性能が低下してしまいます。また湿気が中空層に流入してペアガラスの内部に結露が発生したりもします。

 この様な劣化が発生するのが、10~15年程度と言われています。よって断熱性能が低下してきたペアガラスは取替が必要になります。高額なガラスなので、十数年でその性能が失われて取替るのでは、省エネルギーに繋がるのか疑問にも思います。もう少し耐用年数を長くなるように改善をすることが期待されます。

NPO日住協協力技術者 一級建築士 山田 俊二

集合住宅管理新聞「アメニティ」2025年4月号