建物Q&A 大規模修繕工事で必要なのはどの様な工事?(2024年4月号掲載)

 

 大規模修繕工事の工事内容は足場を掛けて行う修繕というイメージですが、マンションにより、また経年数により工事内容が異なっている様です。どの様な工事が必要なのでしょうか?

 

 大規模修繕工事の修繕項目は、「コンクリート躯体の劣化を修復する工事(コンクリート躯体補修工事)」「外壁から建物内に雨水浸入するのを防止する工事(シーリング改修工事)」「美観やコンクリート保護機能を回復する工事(外壁等塗装工事)」が主目的で、どの工事も足場が必要な工事があるため、「足場設置工事」を含みます。 この足場設置費用は高額であることから、足場が必要なその他の工事も同時に行うのが、大規模修繕工事です。大規模修繕の修繕周期は右記主目的である修繕項目のいずれも修繕が必要になる時期を修繕周期としています。一般的には10~15年を周期とし、劣化状況を見てその前後に修繕を実施しています。また、大規模修繕工事と同じ修繕周期の工事(床防水・庇防水等)も合わせて行います。

 大規模修繕工事とは別に鉄部塗装工事が5年前後毎に行われます。この鉄部塗装工事は大規模修繕工事の修繕周期の公約数を修繕周期にすることにより、大規模修繕工事の際に同時に鉄塗装工事が出来る様にし、コストダウンを図かります。

 また大規模修繕の修繕周期より長い周期の修繕工事があります。屋根防水改修工事(工法により20~30年前後が修繕周期)や玄関扉・アルミサッシ取替工事(30~35年周期)、手摺取替工事(35~40年)等で、足場を必要としない工事は、大規模修繕工事とは別な時期に行うことが多く、修繕時期が大規模修繕と近い場合は合わせて大規模修繕時に行う場合もあります。

 修繕(新築時の性能を修復する工事)が大規模修繕工事の主要工事ですが、経年に応じて建物の改善工事(新築時には無かった機能や備品・設備を付加したりする工事)も行い、住環境を充実していくことも、建物を長期間維持していくために必要です。

 一方、修繕積立金が不足し、予定工事が全て出来ない場合は、足場を必要としない工事を先送りする場合もあります。

 以上は建物の修繕ですが、各種の附帯設備(給排水・ガス・電気・エレベータ設備等)も、これらと別周期で修繕をする必要があります。建物の計画修繕のみを大規模修繕という場合と、付帯設備の一斉修繕も含めて大規模修繕という場合があります。

NPO日住協協力技術者 一級建築士 山田 俊二

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2024年4月号掲載)