居住者がテラスで古新聞を焼却 コンクリートが一部焼け焦げた塗装等の他、構造体の補修も必要か?(2010年6月号掲載)

 5階建・120戸・築15年・鉄筋コンクリート造のマンションです。一人住まいの高齢者が、1階南側テラス(屋外)で古新聞を焼却(?)し、この火が隣戸避難板付近に置かれた物置に延焼して、1階のテラスや2階のバルコニーの上裏・梁・アルミサッシ等に、すすの付着、焼け焦げ、コンクリートの変色・ひび割れ、タイルやコンクリート表層の剥がれ等の被害がありました。

火災は居住者が管理員に連絡し、管理員が消火器等で消火活動を行いました。出火推定時刻は、午後4時、放水開始は4時5分、鎮圧・鎮火時刻は4時25分です。塗装やタイルは補修しますが、コンクリート構造体は補修が必要でしょうか。

 鉄筋コンクリート造の建物は、火災を受けても構造的な変形が少なく、燃焼しないで、壁・天井のコンクリートがすすけたり変色したりする程度で、構造的には局部的な損傷にとどまります。この局部的な損傷がどの程度かを調査し、補修の必要性の把握を行い、必要に応じた補修・補強を行う事が必要です。

 壁・天井等コンクリート構造体の補修の必要性の有無は、コンクリート・鉄筋の受熱温度を推定する調査を行い判断します。

 コンクリート強度は、受熱温度100℃以上で低下し、高温になるほど強度の低下率は高くなります。鉄筋の強度が低下するのは、受熱温度500℃を超えると低下するとされています。この受熱温度は、焼跡の状況から以下の様に推察します。

①すすの付着→300℃未満、②ピンク・赤色に変色→300~600℃、③爆裂→250~450℃、④亀甲状の亀裂→580℃以上、⑤中性化→500℃以上。

 建物に使われているその他の部材では、アルミニウム窓枠の溶融→650℃以上、型ガラスの溶融→800℃以上、木材の炭化→260℃以上等があります。
上記の調査結果により、補修・補強の範囲・工法を決定し、補修工事を行います。

回答者:NPO日住協協力技術者
一級建築士 近藤武志
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2010年6月号掲載)