管理費等滞納問題を再考する⑤滞納組合員の実情をどう理解・認識するか

滞納組合員の実情をどう理解・認識するか

 

組合員が居所不明に!

 

日ごろから滞納者に対する定期的な督促をしている場合、書面作成内容にかかわる具体的事実は容易に記載できる。すなわち管理組合会計の日常管理がきちんとされていると滞納管理費等の債権としての請求金額について、あわてることはない。
前回、管理費等の滞納組合員が自己破産した2タイプの免責の審判のケースをご紹介した。その審判のあと、2タイプとも、管轄地方裁判所の権能により本人の区分所有権である不動産は競売手続きに入るが、実行されるまでに数ヶ月を要する。ここは管理組合としては静観するしかない。その過程で当該裁判所から不動産査定のため、執行官が派遣されてくる。その際、滞納管理費等の額の確認がある。そして専有部分のみならず、共有部分についても現状調査があり、該当箇所の写真撮影等がなされる。理事長はこれに同意し、見守るしかない。執行官の職務執行が滞りなく終了したのち、管轄地方裁判所が評価額を決定し、競売を執行する。競落人の確定・売買・所有権の移転登記、そして新所有権者が当該組合員の特定承継人として滞納管理費等を継承。前述したように管理組合は区分所有法第8条の規定により、特定承継人から滞納管理費等を全額受領できる。このように自己破産した組合員が免責になった場合、管理費等の滞納額は特定承継人から納入されるので、管理組合として不良債権になることはない。
では支払能力がない別のケースに直面したときの管理責務に論点を移してみたい。

 

居所不明の場合

 

連絡のため電話をかける。通じていた電話でのコミュニケーションがだんだん取り難くなる。 組合員が管理組合からの電話であるとわかると電話をすぐ切る。電話口に出なくなる。いつも留守電テープが流れる。どうしたのかしら?と思っているうちに、「この電話はただ今使われておりません……」と、ある日から通じなくなる。電話番号変更の連絡はもちろん受けていない。転居届はなされていない。これまでどおり、訪問する、督促状・請求の文書をポストに入れる。郵便物がたまっている。滞納組合員(同居の家族も)がいつの間にか、マンションからいなくなっているのである。家財は残している。入居時の緊急連絡先に電話をかけて、相談する。組合員によっては通じない場合もある。その場合、もはや本人に確認するすべもない。
日ごろから、緊急連絡先に変更のあった場合、早めに報告するよう広報活動を惜しまないことが大切である。複数の連絡先を登録するように管理組合として考えておくとよいのではないだろうか。緊急連絡先の登録が万能であるわけではないのだが。内容証明郵便で発信しても、受取人不明で管理組合に返送される。必要な文書が到達しないのである。
生活の本拠を移転した先が皆目わからない。管理組合が掌握している緊急連絡先等、親族に問い合わせても埒が明かない。管理事務上、近親者(親・兄弟姉妹・成人した子ども等)に事情を説明して、居所の情報提供をお願いする。面談を受け入れて、良心的な態度を示される方もいるので、理事長として精神的に救われることはあるが、管理費等の滞納金を保証していただけることは期待できない。「本人の問題です」、「居所は存じません」で終わる。
このような事態で管理組合が独力で居所調査をすすめることは到底できない。労多くして、成果なしである。昨今、この困難に対し、管理費等滞納金の回収代行業なる情報(註8)がみられる。ある法律事務所が管理組合から委託を受けて、未納管理費等の督促・請求・折衝などを行い、滞納金を回収する業務をスタートさせたのである。行方不明者の追跡調査も行ない、住民登録している限り、弁護士の立場から居所を突き止めることができるといわれている。管理組合にとって難題解決の1手段といえそうだ。勿論、費用は有償(註9)である。

(註8)「マンション管理新聞」(2003年9月15日号)、「住宅新報」(2005年2月15日号)参照。
(註9)委託するとき着手金1万円、請求諸経費は実費、成功報酬として回収滞納金額の35%。

(2005.12)