マンション標準管理規約改正〈5〉 専有部分の保存行為実施の請求/共用部分の管理に伴って必要となる専有部分の保存行為等:2026年4月号掲載

 今月は専有部分の保存行為実施の請求、共用部分の管理に伴って必要となる専有部分の保存行為等について確認する。

専有部分の保存行為実施の請求

関連条項
単棟型 第23条
団地型 第23条
複合用途型 第23条

 従来の標準管理規約では、共用部分の管理のため必要な場合に、管理組合による専有部分への立入請求のみを可能としてきた。一方で、自ら実施する保存行為の請求が可能かは明確ではなかった。今般の区分所有法改正では、自らの専有部分等を保存するために、他の区分所有者の専有部分に対して、自ら保存行為を実施することを請求できる旨が明確化された。

 そこで標準管理規約でも改正区分所有法の趣旨を踏まえ、共用部分の管理のため必要な場合(共用部分に影響が生じている)に、管理組合が専有部分に対して自ら保存行為を実施することの請求ができる旨を規定した。

 なおここでいう「保存行為」とは、専有部分の性質を変えない範囲内において、その利用もしくは改良を目的とする行為である。

 この専有部分の保存行為実施請求については、次の2つのパターンが考えられる。

例 専有部分配管から漏水事故が発生
①共用部分に影響が生じている場合 管理規約(単棟型第23条)に従い、管理組合が、漏水発生元の専有部分の保存行為の実施請求が可能
②専有部分のみに影響が生じている場合 改正区分所有法(第6条第2項)に従い、影響を受けている専有部分の区分所有者が、漏水元の専有部分の保存行為の実施請求が可能

専有部分の保存行為実施の請求:出典 国土交通省資料より抜粋

共用部分の管理に伴って必要となる専有部分の保存行為等

関連条項
単棟型 第21条第2項
団地型 第21条第2項
複合用途型 第21条第2項

 給水管等の設備は、共用部分(立管)、専有部分(枝管)が接続されて、一体となって機能しているが、従来はそれぞれの管理は、共用部分は管理組合、専有部分は区分所有者の責任と負担により行うことが原則とされてきた。

 しかし、構造的に一体になっている給排水管等は、修繕工事も同時に実施したほうが、効率的な場合も多いと考えられている。

 そのため、標準管理規約では、これまでも共用部分と専有部分の配管等の一体的な修繕を可能としてきた。(単棟型第21条第2項)。

 改正区分所有法では、そうした共用部分と専有部分の配管等の一体的な修繕について、

①規約の特別の定め

を設けたうえで、

②総会決議

を経れば、可能である旨が明確化された。

 そこで、標準管理規約においては、改正区分所有法の規定を踏まえ、(単棟型)第21条第2項の規定が、区分所有法が求める「規約の特別の定め」に該当することをコメントに明示したうえで、総会決議を要する旨を条文上明確化している。

 なお、この改正項目の対象となる「専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の保存行為等」(単棟型第21条第2項)には、共用部分と専有部分の配管等の一体的な「修繕」のほか、一体的に行う「清掃」等も含まれる。

衡平性確保措置が重要

 このような共用部分・専有部分の配管等の一体的な保存行為等は、高経年マンションで行われる給排水管等の一斉更新工事において行われることが今後増えると予想されるが、それでも原則は、専有部分の管理は、各区分所有者の責任と負担でなされるもので、一体的な修繕工事を行う場合は、管理組合内での合意形成が重要となる。
 そこで、その手続きについて確認したい。

事前の手続き
①管理規約の整備
・標準管理規約(単棟型)第21条第2項と同様の規定を規約に盛り込む
・修繕積立金から費用を支出する場合には、修繕積立金の使途の変更が必要となるため、これも規約に反映させる
②長期修繕計画への位置づけ
・長期修繕計画に位置づけ、修繕積立金を充当することを明確化
実施段階
③総会決議
・共用部分の管理又は変更と併せて専有部分の保存行為等を行う旨を決議(配管の全面更新であれれば通常は普通決議、構造躯体に影響があるような場合は出席者による4分の3以上の特別多数決義)
④費用負担の衡平の確保
・先行して配管等の工事を行った区分所有者に対し相当額を補償するなど、費用負担の衡平を図る

 なお、この「衡平性確保措置」は、標準管理規約には規定されていないが、区分所有法により「しなければならない」とされているので、工事前に、アンケートや調査を実施し、該当者がいれば「衡平性確保措置」をしなければならない。

 「衡平性確保措置」がとられなかった場合、管理組合はどのようなリスクを負うのか。

 これについては、2月14日に行われた(一社)マンションリフォーム技術協会のセミナー「管理組合が行う専有配管一斉更新工事の進め方」において、講師の佐藤元弁護士は、以下のリスクを掲げていた。

■総会決議無効確認請求訴訟のリスク
 区分所有法では衡平性確保措置を執らなければならないとしているため、とらない決議は無効と主張される可能性がある。

■総会決議の効力を差し止める仮処分
 決議後、工事が実行、完了してしまうと、訴えの利益がないため、裁判所は総会決議無効確認請求の訴えを却下するため、工事が実施されないよう、総会決議の効力を差し止めるための仮処分を申し立てる。

■金銭請求のリスク
 反対者側が計算した補償金を請求する可能性がある。

衡平性確保措置の方法

 では、どのようすれば、衡平性確保措置が執られたと言えるのか。これについても佐藤弁護士はいくつか例示している。なお、この例示は、同セミナーで、給排水管等の一斉更新工事について、技術的な面から注意事項等を講義した、同協会理事・設備部会長の柳下雅孝氏による分類である。

■組合一斉更新方式(全戸一括管理組合発注・修繕積立金を使用、資金不足の場合は組合で借入)
・決議において、分配の基準を決めておく、あるいは最終的な分配決定権限を理事会等に具体的に授権する。この際、先行工事者が負担した金額を支払うのは、これから工事を実施する者との間で衡平性を欠くため、今回工事のうち、専有部分に対する部分を住戸数で除した金額が妥当ではないかとのことであった。

■組合募集方式(協力金支給 組合が参加者を募集し参加者には協力金を支給)
・一定期間内に工事を実施すれば協力金を支給し、先行工事者にも協力金を支給する。
 このように、共用部分・専有部分の配管等の一体的な更新工事を管理組合が行う場合は、衡平性確保措置に十分配慮しながら、管理組合内での合意形成を進めていくことが重要なようである。

共用部分の管理に伴って必要となる専有部分の保存行為等 出典  国土交通省資料より抜粋

集合住宅管理新聞「アメニティ」2026年4月号掲載