二重床(フローリング)の遮音性能の話-その2(2012年10月号掲載)

二重床(フローリング)の遮音性能の話-その2-

推定L値の問題点

 前回は「L値」と「推定L値」の違いを説明し、5年前に「推定L値」は廃止されたということをお伝えしました。

 では、「推定L値」はなぜ廃止されたのでしょうか。

 「推定L値」の測定の仕方ですが、本来は、床材が使用される現場(建物の床)で実際に性能試験を行い、試験の仕様も細かく指定すべきなのですが、既存の建物で測定するのは現実には難しいため、各メーカーが床材ごとに各々性能試験を行って、数値を出していました。これが「推定L値」です。そこで、自社製品に有利な結果が出るような試験を行うメーカーもありました。
その結果、カタログでは推定L40(数字が小さいほど遮音性能が高い)と書かれた製品があっても、正確に試験を行って数値を出したメーカーと、そうではないメーカーの商品が混在してしまい、これでは消費者は正しく比較検討ができません。

 場合によっては、推定L40と書いてあっても、実際に使ってみたら、L60の性能しかない製品を買わされるケースも考えられます。

 L40とL60では、遮音性能にどの程度違いがあるのかなかなか分かりにくいですが、その差はかなり大きなものです。

 日本建築学会の遮音性能基準によれば、上階で人の走り回る音や飛び跳ねる音が、L40では「かすかに聞こえるが、遠くから聞こえる感じ」なのに対し、L60では「よく聞こえる」とあります。 また、生活実感として、上階の気配をL40は「上階でかすかに物音がする程度で、気配は感じるが気にならない」のに対し、L60は「上階住戸の生活行為がわかり、スリッパ歩行音もよく聞こえる」とあるように、かなり違いがあります。

 このように、名前が似ている「L値」と「推定L値」ですが、内容はまるで違います。しかし、二つの違いが分からず、かつ「推定L値」廃止の事実も浸透していないため、「推定L値」で床材を選んでリフォームをした結果、「リフォーム前より騒音がひどくなった」などのトラブルが今も後を絶ちません。

 廃止になった「推定L値」は重大な問題点を持っていますが、床材メーカーは「推定L値」を使ったほうが都合が良いため、「推定L値」で商品説明をしているケースがいまだにあるようです。
しかし、新しく適用されたΔ(デルタ)等級表記により、この問題を解決できるようになりました。(つづく)

(竹村工業株式会社ジャストフロア事業部 竹村仁)

※フローリングには、下地に直接床材を張り付ける「直張り」と、防振脚で支持したパネルの上に床材を載せる「二重床」があります。「直張り」にも「推定L値」が使われ、「二重床」同様現在は廃止されていますが、「二重床」よりも性能のブレが小さかったため、本稿では性能のブレが大きく、問題の多かった「二重床」に話を特化しています。

(2012年10月号掲載)