マンションに百年住む (11)第三者管理者管理方式について考える 少しお硬いけど重要な話

第三者管理者管理方式について考える/少しお硬いけど重要な話

最近、管理者問題がさかんに論じられている。居住者の高齢化、賃貸・空室率の増加、管理組合への無関心、総会出席率の低下などがその背景にある。

典型的なのはリゾートマンションで、理事のなり手がないどころか、総会を開こうにも開けない例がある。こうなると、建物を荒廃するにまかせるしかない。それを避けるために、管理会社が管理者になるのも少なくないのである。

国交省はこんな潮流を見越して平成19年に「第三者管理者方式検討委員会」を立ち上げた。しかし、高層住宅管理業協会は、これに先立つ二年前にすでに「管理者によるマンション管理運営について」を発行している。近い将来、管理者方式による管理受託が増えるのを見込んでのことと思われる。

これらの現象に輪をかけるようにして、最近、神戸の地震以来、ことあるごとに建替え擁護をしてきたある弁護士が、管理組合無用論ともいえるコラムを発表した。管理組合なんかない方がマンション生活は楽しくなるというのである。

実は、区分所有法は任意性の強い法律で、管理組合や管理者の設置を義務付けていない。私たちは、管理組合は当然のことと思い込んでいるところがあるが、先の弁護士の論はここの虚をついたものである。管理組合は要らないといわれては、これまで管理組合運営に頑張ってきた者は心底穏やかでない。ただし、反発だけでは済まされない。デベロッパーはそう遠くない将来、理事になる必要のないことを売りにしたマンションを分譲することが十分に考えられるし、それに倣う既存マンションも増えるに違いない。

そこで、どうしても忘れてはならないことを二つ書いておく。一つは、区分所有法は任意性が強いとはいうものの集会の決議を中心に理解されてきた。ここから得られた蓄積は戦後民主主義の最も良質の部分で、これを抜きにした議論は不毛であり、将来に大きな禍根を生む。

二つは、管理者を担う主体が成熟していないことである。管理会社は基本のところで営利企業で、「お電話ありがとうございます」と電話応対する業界体質が、居住者の立場に立った管理を担えるとは思えない。一方、マンション管理士も期待できない。大方のマンション管理士は、倫理教育を受けていない。管理者に最も要求されるのは倫理観で、資格を得るために取得した机上の知識ではない。

それでもなお、いろいろの事情で管理者方式に移行しなければならない場合は、監査能力をいかに確保するかが課題である。この点において、日住協をはじめとする居住者組織に多くを期待したい。(満田 翔)

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2010年3月号掲載)