ふっ素樹脂系高耐久塗材の外装塗替え:2022年3月号掲載

【マンション概要】

 Bマンションは埼玉県飯能市の市街を望む高台に立地する。竣工は1993年(平成5年)、総戸数313戸、4階建て中層9棟、7階建て高層3棟、合計12から構成される。敷地内に自然林を有し、ゆるやかな丘の頂きのなかで緑豊かな落ち着いた環境が維持されている。

【工事までの経緯】

 建物の竣工から27年目となる2019年から工事の計画に取り組んだ。今回は2回目の大規模修繕工事となるが、1回目の大規模修繕工事は初年度の入居時期の違いにより、2006年と2008年の2期に分けて実施された。1回目の大規模修繕工事からそれぞれ14年、12年が経過するが、建物外部廻りの傷みは比較的軽度で、居住者へのアンケート調査においても深刻な不具合は報告されなかった。

 1回目の大規模修繕工事において外壁塗装にふっ素樹脂系塗料が採用されていた。日射の影響の少ない北側面などでは塗料表面の艶も保持している状況であり、むしろ今回の大規模修繕工事の実施を2~3年程度延伸することも考えられた。しかしながら、工事の時期をあまり遅らせることによる予期せぬ不具合が生じるリスクや、一部には黒ずんだ汚れがひどく目立つ箇所もあることから、おおむね当初の予定通りに進めることとなった。

【工事内容の検討】

 工事内容は外壁塗装と屋上防水を主体とし(陶瓦葺きの中層棟の屋根部分は現状維持)、比較的状況の良いバルコニーや中層棟の階段室内の床は原則としてクリーニングと端部防水に止め、雨の吹き込みが強い高層棟の共用廊下と外部階段は床シートの張替えとした。

 なお、外壁はふっ素樹脂系塗料で仕上げられていたため、新たな塗材による塗替えには十分な注意を要した。ふっ素樹脂系塗料は耐候性に優れ、最高級グレードといってもよい塗料であり、15年以上の耐用が期待できる。ただし、ふっ素樹脂系塗料の再塗装に際しては、下地処理が不十分であったり、下塗材の選択を誤ったりすると、新たな塗材をはじいてしまい十分に密着しない場合がある。今回工事では、既存塗膜の表面をサンドペーパーやナイロンタワシなどを用いて艶が無くなるまで、ひたすら地道に目荒しをおこなった。そのうえでエポキシ樹脂系のサーフェーサーを下塗材として塗布し。上塗材は従前のグレードを落とすことなく、ふっ素樹脂系塗料を採用することとした。

 

既存塗膜表面の目荒し作業

 そのほか、各住戸の玄関扉は号棟により状況に差異がみられたことから、改修方法に関して①扉更新、②吹付工法での塗装と部品交換、③部品交換のみ(扉はクリーニング程度)といった3種類の方法を設定した。当初は号棟により玄関扉の改修方法をそれぞれ選択する予定であったが、施工会社から提示された扉の更新費用が思ったよりリーズナブルであったことから、最終的には全住戸共通して枠カバー工法による扉の更新を実施することとなった。

【工事の実施】

 新型コロナの感染の広がりを受けて、当初予定していた2021年2月からの着工を5月に順延して工事はスタートした。工事期間中は幸いにして工事関係者に感染者がでることもなく順調に進行した。

 多数の作業員を導入しなければならない多棟型のマンションでは、現実的に必ずしも熟練作業員ばかりではないことから、号棟による仕上り感の違いや施工品質の差異が工事後に問題となる場合が少なくない。1回目の大規模修繕工事が2期に分けてそれぞれ別の施工会社により実施されていたため、経年状態や仕上がりの程度に若干ではあるが号棟による差が見受けられた。今回の大規模修繕工事では、工事関係者一同が号棟ごとの仕上がり感や施工品質をできるだけ均一化することに特に留意した。

 眩しいくらいに輝く白い外観に再生された建物は、歴代の理事さんや長年継続して携われてこられた委員会の方々の真摯な取り組みの賜物である。

株式会社スペースユニオン 一級建築士 奥澤健一

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2022年3月号掲載)