マンション設備のレベルアップ事例 — 電気幹線改修と快適な暮らしの実現(その1)

新座住宅における電気幹線の更新と電気容量の増量対策工事

クーラーや食洗機が家庭の必需品となっている中で、古いマンションや団地では電気製 品の使いすぎでブレーカーが下りてしまうことに悩まされている。
この不便さを解消するには、住宅に引き込まれている電気幹線を改修してアンペアの増 対策を図る必要があるが、集合住宅では諸々の制約があり各住戸の一存では実施できない のが現状だ。
電気の幹線改修をすることによって、集合住宅での暮らしがどのように変わってくるの かなどを、新座団地での改修工事の事例を中心に、担当した設計監理者にご執筆いただい た。

新座住宅では、入居35年を経過し諸設備の更新が求められていたが、なかでも、電気 幹線など配線設備等の劣化対策並びに電気容量の陳腐化対策(増アンペア)を急務として 、昨年10月から電気幹線改修工事に着手し、本年7月に完了した。
改修工事の実現にあたっては、管理組合で数年来電気設備の更新と住戸電気容量の増量 について検討を重ね、平成15年に事業計画を決定し、理事会の諮問機関として「電気設備 改修委員会」を立ち上げ、準備を進めてきた。
平成16年2月に、複数の設計事務所との見積り合わせ並びにヒアリングを行って設計事 務所を決定し、調査を開始した。
調査内容は、既存電気設備の現況と新設設備の基礎調査とし、

各住戸の契約電気容量調査
住戸内配線路絶縁抵抗測定
コンセント劣化調査、並びに既設配線劣化調査

も過去に火災によって浸水した住戸(10戸)を含む18戸に対して実施した。
その結果、増築棟においては10年前に更新されているため30Aの漏電ブレーカーが 設置されているが、既存棟は建設当初のまま漏電ブレーカーは設置されていなかった。ま た、幹線に関しては一部床下幹線分岐部において劣化が確認された。

(つづく)

〔新座住宅の概要〕
埼玉県新座市、住棟5階建て35棟3DK1010戸(内、増築棟12棟310戸)、 1970年(昭和45年)旧日本住宅公団分譲
工事等の期間=調査設計/平成16年3月~9月、施工/平成16年10月~17年7 月
〔工事項目〕
引込設備更新
幹線設備更新
住戸内分電盤更新
階段灯更新
〔工事内容の概要〕
共用部電気幹線を更新するとともに、住戸の電気容量(既存棟最大容量30A対応)を最大50A対応可能に増量する。階段室共用灯(既存10W)を15W に更新する。階段室シャフト内1・4階に共用コンセントを設置するとともに、ケーブル テレビと電話用電源回路を共用灯回路から分離して単独回路とする。

1級建築士事務所 秋設計
(2005.09)