区分所有者が共用部に開けた穴 復旧工事に応じないがどうすれば・・・

 

区分所有者Aさんは、その居室の壁柱に穴を開けて配管・配線をしています。壁柱は共用部分です。そこで管理組合は、Aさんに対し、配管・配線を取り外すとともに、開けた穴を塞ぐ工事を求めました。ところがAさんは、「自分は一級建築士であり、細心の注意を払って施工した。建物の基本構造を弱めるおそれはまったくないので、誰にも迷惑をかけていない。」と取り合ってくれません。どうすればよいでしょうか。

 
区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはなりません(区分所有法6条1項)。区分所有者が共同の利益に反する行為をした場合は、管理組合は、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為の結果を除去することなどを請求することができます(同法57条1項)。
Aさんは、自身の行為は建物の基本構造を弱めていないのだから、「建物の保存に有害な行為」にはあたらないと考えているのかもしれません。しかし、判例は類似の事案で、「区分所有法57条により、その行為の結果の除去を求めることができる行為は、建物の保存に現実に有害な行為に限定されない。・・・各区分所有者がたとえ建築の専門家であったとしても、それぞれ独自の判断により、悪影響を及ぼさないとの結論を下して、共有部分に変更を加えること自体、現実には建物に有害なことではないとしても、有害となるおそれがあるために、建物の管理又は使用に関し、区分所有者の共同の利益に反する行為ということができる(区分所有法6条1項)。」と判示し、共用部分に勝手に穴を開けた区分所有者に対し、穴を塞ぐなどの復旧工事を命じました(東京地裁平成3年3月8日判決(判例タイムズ765号207頁))。
判例の「現実には建物に有害なことではないとしても、有害となるおそれがある」という表現は少々分かりづらいとも思いますが、結論としては妥当と思います。共用部分の管理は、原則総会決議で決めるべき事項です(同法17条1項、18条1項)。建物の保存に有害でないからといって、各区分所有者が勝手に共用部分である壁柱に穴を開けることは通常許されません。区分所有者の共同の利益に反するか否かは、「当該行為の必要性の程度、これによって他の区分所有者が被る不利益の態様、程度等の諸事情を比較考量して決すべきもの」とされています(東京高裁昭和53年2月27日判決(下級裁判所民事裁判例集31巻5~8合併号658頁))。ですので、区分所有者の共同の利益に反するか否かは、具体的事案ごとに判断する必要がありますが、共用部分に区分所有者が勝手に穴を開けたというご質問の事案では、その行為の必要性が、共用部分の管理は管理組合で行うという団体自治の利益を上回るという極めて例外的なケースでない限り、裁判で復旧工事を請求すれば、認められると思います。

回答者:法律相談会 専門相談員
弁護士・内藤 太郎
(2019年3月号掲載)

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