マンションに百年住む (3) マンションは車と同じか

マンションは車と同じか

前回、マンションに経済効率は必要ないとしたので、今回はその周辺に触れる。

わが国の住宅政策は終戦直後の大量の住宅不足から始まった。昭和30年に日本住宅公団が設立し、郊外に大量の団地が供給されたのもその一環である。しかし、すでに昭和43年には住宅数が世帯数を上回り、今や、住宅余り時代。欲を言わなければ持ち家も賃貸も容易に探すことが出来る。それにも関わらず、住宅の新築着工数は車の生産台数とともに景気動向の手掛かりとされる。とりわけ、現在のように景気が低迷すると、政府、業界とも住宅の新築着工に期待して、建替えを煽る雰囲気も作られる。

最近、都市開発の規制緩和・民活の主導者で、平成14年の区分所有法改正に大きな影響を与えたある行政法の専門家は、建替えを面積のみの三分の二、または二分の一決議にすべきと言っている。これに同調する業界人も少なくない。冗談じゃない。きちんとしたメンテナンスをすれば百年でも十分にもつマンションに、市場原理を求めるのは止めにしてもらいたい。

話は違うが、最近のエコカーブームもどこかおかしい。確かに低燃費には違いないが、買い替えを煽られているふしがある。自動車業界は、今まで次から次に新しいモデルを出し、まだ十分に乗れるのに新車に替えたくなるような誘導をしてきた。せっかくのエコの背後を、疑いたくなってもしかたがない。

住宅も車と同じ経済構造のなかに組み込まれており、20年経つと建物の評価額は半値、30年すると建物を除却して更地にした価格を大幅に下回る事態も珍しくない。つまり、これが経済効率に基づく住宅産業のパラダイムである。これを転換するのは、マンションを少しでも長持ちさせるという住み手の意志の総和に他ならない。建替えが容易でないのはまんざら悪くない。 (萬田 翔)

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2009年7月号掲載)