タイル張りマンションのタイルの浮きの比率は何%?(2015年8月号掲載)

 前々回のQ&Aでタイル張りのマンションの大規模修繕周期についての問答がありましたが、丁度その頃に私共のマンションの大規模修繕が始まりました。タイル張りです。着工後外壁のタイルの劣化調査が始まり大量のタイルの浮きが見つかりました。

東面外壁が8.2%、西面外壁が3.5%、南面外壁が1.5%、北面外壁が2.2%のタイルが浮いているとの報告でした。こんなにタイルの浮きがあるのは瑕疵であろうと分譲会社に抗議したところ、分譲会社と元施工会社の回答が建物全体では2.9%の浮きで通常大規模修繕時に想定される浮きは3~8%である事からコンクリートの乾燥収縮・熱膨張による経年劣化や3.11の地震によるタイルの浮きで瑕疵にはあたらないとのことです。一般的なタイルの浮きの割合は3~8%なのでしょうか?

 外壁タイルの浮き(タイルが一部或いは全面が下地に接着していない状態)の原因は、外壁表面にあるタイルが日射などで熱膨張しその下地のモルタルやコンクリートは余り熱が伝わらず膨張が少ないと界面にずれる力が働きタイルが浮く場合や大きな地震による揺れなど建設後の外的な要因と、新築時に下地のモルタルの塗り付け不良、タイルの張り付け時の張付モルタルの塗り厚不足やタイルの圧着不足、下地コンクリートの表面が平滑のままタイルを張った場合など不良施工による内的な要因があります。また、それらが複合してしている場合もあります。

 ところでタイルの浮き比率については標準的な見解はありません。修繕に携わる人たちが過去の経験で相対的に浮きが多い・少ないの判断をしているだけで、修繕施工者・修繕設計者により見解が異なります。私はタイル張り面積の2%を多い・少ないの目安としています。この目安からみるとお問い合わせの東面8.2%の浮きはかなり異状な感じがします。建物全体では2.9%の浮きでも東面の浮きは多すぎるように思えます。

 分譲会社や元施工会社との交渉にはタイルの浮き比率よりも施工の適正さを問う方が良いと思います。浮いたタイルを何箇所か剥がし、下地のコンクリートがツルツル状態ではないか(コンクリートの目荒し不良)、タイルの裏足(タイル裏面の縞状の凹凸)の凹みに張付モルタルが充填されているか(充填されていないと張付モルタル塗り厚不足かタイルの圧着不足)等が分かりやすい施工不良です。

 タイル張り建物のタイル剥落による事故が頻繁に耳にします。このため特殊建築物の定期調査時にタイル全面打検を義務づけられても来ています。ローコストと工期短縮のため発生する不良施工を防止すると共にタイルの剥落防止の新しい施工技術の開発が望まれます。

回答者:NPO日住協協力技術者 一級建築士 山田 俊二
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2015年8月号掲載)

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