総会前に施工会社を決定した前理事会の大規模修繕工事実施の議案は否決。 見積書の内容に問題はあるか?(2010年8月号掲載)

 築26年、36戸のマンションです。建物各部の劣化が進んでいて、前理事会で、大規模修繕工事の実施のため3社から見積書を取得し、総会で、大規模修繕工事実施と工事範囲・仕様・工期、施工会社の選定、工事発注金額の決定等を理事会に一任する決議の議案書が区分所有者に配布されましたが、その後、総会前に施工会社を理事会で決定した旨の管理組合だよりが配布されました。総会では、「議案が承認された後に、施工範囲・仕様・工期の決定、施工会社の選定を行うのではないのか」「居住者の意見を聞くべきではないのか」「3社からの見積内容が不明」等の意見が出て、この議案は否決されました。新しい理事会で、今後どのように大規模修繕工事に取り組んだらよいのでしょうか。

 建物の劣化状況や修繕履歴と3社の見積書を点検しましたが、建物竣工後26年が経過し、この間に、大規模修繕工事、屋根防水工事、鉄部塗装工事を実施しています。

 建物各部の劣化が進行し、2回目の大規模修繕工事が急がれる状況です。

 施工会社3社から提出された見積書から工事内容を推察すると、建物の美装性、防水性能の維持がメインの工事内容となっており、建物を長く使い続けるための耐久性の維持や、バリアフリー化等の高齢化対応、省エネ、快適に住まい続けるための改良・改善の工事等が検討されていないようです。
 居住者の意見・要望等についても意見を聞いて、工事内容について検討し進めることが必要です。

 大規模修繕工事実施に関しては、修繕工事の目的・検討した経緯を説明した上で、工事範囲と内容・工事費の調達方法(修繕積立金の取りくずし等)等について総会で承認を得ることが必要です。

大規模修繕工事に関するすべての事項について理事会に一任する決議や、施工会社から見積書を取得し、これにより工事実施の検討を行うことは避けるべきです。

回答者:NPO日住協協力技術者 一級建築士 近藤武志
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2010年8月号掲載)