大地震後もマンションで生活可能か LCPで生活継続力をチェック:2018年7月号掲載

 6月18日午前7時58分、大阪府北部を襲ったM6・1(最大震度6弱)の地震。その前日には群馬県南部でM4・6(最大震度5弱)の地震が起こるなど、大きな地震がいつ起きても不思議ではない日本列島。大地震に備え、本紙ではこれまで、旧耐震建築物(昭和56年建築基準法改正前の建築物)の耐震性を高める耐震工法や、政府や自治体の耐震改修への補助制度などを紹介してきた。

 建物の耐震性を高めれば、それで安心なのか。大地震後、しばらく続くであろう不便な生活を、いかに乗り切るかも管理組合には求められる。では、どこを、どうすれば地震後の生活継続力を高められるのか。これらを客観的指標で評価するのがLCPである。

マンションは在宅避難?

 大地震後の生活と言えば、多くの人が地域の避難所に詰めかけ、肩を寄せ合いながら避難生活を続ける過去の映像を思い浮かべる人も多いだろう。「それは、マンション居住者には当てはまらないだろう。」と指摘するのは、新都市ハウジング協会マンションLCP分科会主査の村田明子氏。

 東日本大震災後、避難所に避難者が殺到したため、被害が軽微なマンション居住者は、停電・断水が続く自宅に戻った。「大地震が首都圏で起きれば、とても避難所では人を収容しきれないため、『倒壊の恐れがある』といった場合を除き、マンション居住者は自宅に留まることが求められる。都内の区によっては、その旨、はっきりと示す区もある」という。マンション居住者は在宅避難を前提に、被災後の生活を想定した防災対策が求められている。

生活継続力を評価するLCP

 マンションが被災後の生活を継続するうえで、何ができて、何ができていないかを客観的にチェックするのがLCP(Life Continuity Planning:生活継続力)だ。

 新都市ハウジング協会では、「LCP50+50」として、大地震後のリスクを、別表1のように、「地震直後リスク」と「生活継続リスク」に分け、さらにそれぞれ6つに分類。二つのリスクについて、マンションの備えがどうなっているのか、施設・設備(ハード)と、運営計画・組織(ソフト)の面からチェックする50の評価項目を設けた(表2にチェック項目一部抜粋)。

表2 チェック項目(一部抜粋)

 評価結果は、図のようなレーダーチャートに示され、マンション内のどこをどのように改善したらよいかが、「総評」として示されるようになっている。

LCPの活用方法

 自分のマンションの防災性能を「見える化」することができるLCPだが、各マンションでは、この結果をどのように生かせば良いのか。図のチャートでは、地震直後のリスク対策で、閉じ込めリスクが平均的なマンションより低い結果となったが、その原因が玄関ドアであった場合、玄関ドアの耐震化を行うことで、閉じ込めリスク対策は高くなる。

 このようにLCPを活用することで「お住いのマンションの現状を認識していただき、そこから対策の優先順位を付ける。それを、大規模修繕工事等の工事内容に反映させ、あるいは管理組合内の組織を見直すなど、各マンションに合った計画に落とし込んで、生活継続力を高めていただければ」と村田氏。

チェックは無料

 チェックは、新都市ハウジング協会のホームページ内の専用ページ(https://anuht-lcp.com/)にアクセスすれば利用できる。利用は無料。

(2018年7月号掲載)