マンション標準管理規約(単棟型)の改正(案)を提示/国土交通省  新型コロナウイルス対策等が盛り込まれる

 国土交通省は、法改正やデジタル化への対応等を踏まえたマンション標準管理規約の改正を検討・議論するため、1月29日、「第4回マンション管理の新制度の施行に関する検討会」(齋藤広子座長)をWEB会議で行った。

 同検討会は、昨年の「マンション管理適正化法」「マンション建替え等円滑化法」の改正を受け、マンション管理適正化法で新たに規定される、国の基本方針、地方公共団体の管理計画認定制度等の基準などを議論するため、昨年7月に国土交通省に設置。今回は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、総会等への対応に向けた管理規約改正の議論が行われた。

 今回示された改正案の概要は表1の通り。

 表の①~③までが、コロナ禍への対応を背景としたものとなっている。
 その他④では、配管工事で共用部分と専有部分を一体的に改修する際、修繕積立金から工事費を拠出する場合は、経済的合理性が認められ、かつ、あらかじめ長期修繕計画で専有部分の配管の取替えが記載されていることや、先駆して工事を行った区分所有者への補償等を行うこと等に留意すること等が記載された。⑤は昨年の法改正※に伴い追加された。

IT活用の総会・理事会の実施等を明確化

 ①ではIT活用の総会・理事会が可能なことを明確化した。
 具体的には、ITを活用した総会・理事会の招集場所にURL等が考えられ、理事長の業務報告もIT活用が可能なこと、さらに、ITを活用した議決権の行使が可能なことが示された。

 但し、理事長は、各組合員からの質疑応答等について適切に対応すること、総会出席組合員として扱われるのは議決権の行使が予定される出席者に限られ、単なる傍聴人として議事を傍聴する組合員は、出席組合員には含まれないこと。さらに、ITで議決権の行使をする場合、第三者が組合員になりすました場合やサイバー攻撃や大規模障害等による通信手段の不具合が発生した場合等には、総会の決議が無効となるおそれがあるなどの留意事項が記載される。

 ②では、行政による緊急事態宣言の発令等、マンション内での感染症拡大が見込まれた場合に、使用細則を根拠に、居住者による共用部分等の使用を一時的に停止・制限することが可能なこと、また、災害又は感染症の感染拡大等によりやむを得ない場合は、総会を延期し、これらの状況が解消された後、遅滞なく招集すれば足りることとしている。

 ③では、コロナ禍で、宅配を利用する世帯が増え、宅配ボックスのないマンション等では、自宅玄関前や玄関前に専用の器具等で荷物を置く「置き配」が増える中、「置き配」のルールを細則で定めることが可能なことを規定した。

 これらの改正について、検討会では、①や②について、ITを活用した総会は、区分所有法で一律に否定されていないものの、招集や会議及び総会の延期についても明確化されていないとの疑義が示され、区分所有法での明確化が必要との意見が出された。

 

※改正マンション管理適正化法、改正マンション建替え等円滑化法の概要(2020年6月成立)

改正マンション管理適正化法

⑴ 国はマンション管理のための基本方針を策定

⑵ 地方公共団体は、国の基本方針を受け、管理適正化の推進を図る施策を定めた「マンション管理適正化推進計画」を作成

⑶ 管理組合はマンションの管理方法等を定めた「管理計画」を作成し、その内容が各都道府県の基準に適合するときは知事が計画を認定する「管理計画認定制度」を創設

改正マンション建替え等円滑化法

⑴ 従来の旧耐震基準マンションに加え、
・外壁の剥落等により、周辺に危害を生ずるおそれがあるマンション等
・給排水等の配管設備の改修工事が困難で、それらの腐食等により、衛生上有害となるおそれがあるマンション等
・高齢者、障害者等の移動を円滑にするバリアフリー性能が確保されていないマンション等、要除却認定対象を拡充

⑵ 要除却認定を団地内の一部の建物が受けた時、区分所有者等の5分の4以上の同意により、敷地の分割を可能とする「敷地分割制度」を創設。

 

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2021年3月号掲載)