2.東京でマンション供給が減じれば地方で増える

 この数年、群馬県は1990年代前半以来のマンション開発ブームである。これは近年東京の都心や郊外の駅周辺の土地が高騰したため、デベロッパーが用地取得に困難になったからだ。東京のこの10年間におけるマンション着工件数のピークは平成15年の7万5132戸で、以降低下し平成18年時点では6万1489戸と、ピーク時に比べて2割弱減じた。一方群馬県は同じ時期に322戸から1510戸、4・7倍に転じた。

 地方では元々地元デベロッパーがなく、僅かな供給しかなかったが、そこに東京の減少分のほんの一部の開発が移動しただけで、群馬県のマンション事情が一変したのだ。土地狂乱のバブル経済時には市街化調整区域にまで開発が拡大したが、今回は空洞化が激しい中心市街地に集中しているから、ひょっとしたら市街地の再生が可能かも知れないとの期待感が膨らむ。

 栃木県、茨城県も群馬と同様のマンション開発ブームが生じているが、富山、福井、石川県となると東京の影響はまだ薄いようだ。いずれブーム到来の可能性は否定できないが、東京の供給戸数が再び上昇に転じれば地方のマンションブームは終息に向かう可能性が高い。元々マンション需要が小さいところに業界の都合で開発が進められるのだから、僅かな供給で過剰になりやすく、需要の掘り起こしに苦労する。ブームが終わってみたら中心市街地に空き家が増しただけと言う危険性も否定できない。

 現在までのところ、完売の新築マンションが少なくないが、既存のマンションからの住み替えが多々あり、ストックの中で空き家が増えていると指摘する地元不動産業者が少なくない。実際に中古の値下がりが激しいのが不気味だ。問題はブーム終息時だ。1990年のバブル崩壊直後に完成したマンションの多くは販売不振で空き家状態がしばらく続いたが、その結果ワンルームだけでなくファミリー向け住宅をも投資物件に切り替えて大都市住民に安価に販売したデベロッパーが続出した。

 全国展開型のデベロッパーは売り逃げもすばやい上、国策で会社が救済されたが、一方便乗開発組のにわか地元デベロッパーの場合は行政支援がなく多くが破産した。完売したマンションでも当初から不在家主が半分以上となる場合が多々あった。在庫の一部を下請け業者に押し付けた場合で、分譲広告と競売公告が新聞に同時に掲載された事例があった。

 マンション管理の現場では管理費等の滞納累積、競売の多発、空き家化、組合活動の停滞などバブルの後遺症を今尚引き継いでいる。歴史は繰り返すと言われているから、今回のブームが都市再生に寄与するか、不良ストックの予備軍拡大で終わるか否か、しばらくは注目が必要だ。
なお、姉歯事件の余波で07年6月以降の着工件数が激減している。完成在庫の過剰を調整するいいチャンスと見ることも可能だが、ただし着工延期分が市場にどっと出回れば会社の生き残りをかけた不良販売が復活する恐れもあろう。(つづく)

(2008年2月号掲載)