82.都市の崩壊はなぜ起きる/市街化調整区域が開発自由区域になった場合

 図はマイカー保有率と市街化調整区域の人口比率の関係を示す。線引き都市計画区域の総人口を100とするから、マイカー保有率の県平均値との比較には対象範囲のずれの問題があるが、大まかな傾向を読むには問題はない(非線引き都市計画区域の人口は茨城県全人口の80.5%)。市街化調整区域に居住する人口は東京都では殆どゼロに近く、一方茨城県では34.4%に達している。大都市圏及び県庁所在市が1極集中の県ではマイカー保有率に関わらず市街化調整区域内の人口は少ない。一方北関東・中部の工業県はマイカー保有率が高くかつ市街化調整区域内人口比率が高い。市街化調整区域に市街化区域から多数の人口が溢れる理由は(1)都市規模が小さく中心部への吸引力が弱い (2)工場団地が地価の安い市街化調整区域に造成されやすく、社宅、病院、診療所、商業施設が進出し易い (3)小規模都市分散型配置では、都市間の中間位置でも不便さがない。マイカーがあれば都市の中心部までの距離は小さい (4)都市間の人口獲得競争状態では市街化調整区域における住宅開発を許容しがちである(隣接町村への転居を食い止める、出来れば隣接町村からの転入を促進したい)。

 結果的に全県的に広く住宅開発がなされ、(1)道路、公園、水道、下水、教育施設などのインフラの後追い整備に追われる。拡散都市の弊害はこれだけでなく、マイカーの必要性が高まる一方、(2)鉄道・バスなど公共輸送機関の衰退 (3)農業への被害増大 (4)自然破壊(5)訪問介護の困難化 (6)中心市街地の衰退 (7)空家・空店舗の増加、(8)工場の撤退に伴う地域社会の不安定化などが見られる。県民所得向上至上主義に都市計画が従属したが、来るべき人口減少社会に対しては都市構造上の安定性が乏しい。

 ところで、分譲マンションへの影響を見ると(1)戸建て住宅が安価に取得可能なため、分譲マンションの供給は極めて限定的になる (2)当初から単身者の割合が高く、マンション内コミュニティーは育ちにくい。借家化も速い (3)中古の価格低下が速く維持管理が安定しない (4)絶対数が少ないから行政も議員も管理に対しては無関心 (5)同じ理由でマンション管理組合相互の情報交換組織が育たない (6)地元デベロッパーは育たず、支店もないことからブーム時には大都市圏からの出張開発になり易い。結果的に維持管理も遠隔管理(管理の窓口には地元から管理人を雇用するが、管理会社の担当者が東京にいて、滅多に現地訪問せず)で、不良管理に陥りやすい (7)適正な時期に適正な修繕がなされない(8)古いマンションは駐車場設置率が低く、全くない場合も多い。中古市場では落ちこぼれやすく、低所得の単身者にしか適しない。人口減少に備えて、薄く広く虫食い状に拡大した都市をコンパクトに編成し直すことが急務だが、拡大は容易でも市街地の縮小は容易でない。住民は総論賛成でも各論では反対し易い。都市の中心部にマンションを供給しても拡散のエネルギーがある間は不良化が速い。

 今後人口減少が進めば、郊外の住宅地も都市の中心部も共に劣化する。財政が厳しくなれば、ただ運任せの浮遊する都市になる。(つづく)

(2014年10月号掲載)
(松本 恭治)