不適切コンサルタント問題への提言-マンション改修業界の健全な発展のために-:2017年3月号掲載

 現在のマンション改修業界は、不適切な行為を行うコンサルタントの横行で混乱状態にあります。管理組合が行う大規模修繕工事等に際し、適切な工事費で良好な工事を公明正大に実施できるよう管理組合を支援することがコンサルタントの使命です。そのコンサルタントの一部が計画的・組織的に工事会社からバックマージンを受け取っており、最近そのような不適切なコンサルタントが増えています。
 その結果、ユーザーであるマンション管理組合(区分所有者)に対して、割高な工事による経済的な損失を与え、さらには工事の品質に影響している場合もあります。
 大規模修繕工事における設計監理方式では、コンサルタントと呼ばれる設計事務所が修繕工事の設計(仕様書作成等)を行い、それに基づく施工会社からの競争見積による適切な工事費で、管理組合が行う施工者の選定を支援します。さらに工事中は適切な品質を確保できるよう、現場で検査等を通じて施工者を指導し、さらに改修工事では付きものの増減実数精算や竣工図書類の確認を行います。したがって、区分所有者に対して公明正大に工事を実施しなければならない管理組合にとっては最も適切な方式であり、官公庁や大企業ではこの設計監理方式を採用するのが標準となっています。
 マンションの大規模修繕工事においても設計事務所のコンサルタントによる設計監理方式が普及してきました。一方で長年の経済不況により、新たにマンション改修業界に参入する会社等が増えています。工事会社は勿論ですが、コンサルタントとしての設計事務所やマンション管理士なども少なくありません。それらは技術的には全くの素人を含め、実態は玉石混交です。その中にはコンサルタント(設計事務所)を単なる金儲け商売としてしか考えず、管理組合の支援者としての使命感が欠如した似非コンサルタントも含まれます。たとえ法に触れなくとも、バックマージンを取る事に腐心する「不適切コンサルタント」の存在を放置すればマンション改修業界そのものが取り返しのつかないダメージを受けることになります。
 この不適切コンサルタントの最大の問題は、マンション管理組合(区分所有者)に割高な工事費という実害を与えていることでしょう。さらには業界全体が信用を失い、ひいてはマンション改修業界全体の劣化・衰退につながることです。これらの問題を子細に見て行くと数多くの弊害が生じている事がわかります。

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(2017年3月号掲載)