排水管更新・更生技術『HAM-J工法』

大規模集合住宅管理組合
(神奈川県・横浜市)

共用排水管の更新・更生に新工法誕生

長谷工コーポレーションは、樹脂管更生工法を保有するマルナカと、ライニング鋼管技術を保有するジャパン・エンヂニアリングとの3社で、共用部排水管の更新・更生技術「HAM―J(ハムジェイ)工法」を共同開発した。

神奈川県横浜市にある大規模集合住宅(15棟、総戸数440戸、昭和53年築)管理組合が、「HAM―J工法」の耐久性・信頼性に加え居住しながら短期間で施工でき、工事騒音が小さいことなどを評価し、この工法による共用排水管の更新・更生工事を初採用した。

「HAM―J工法」の作業手順

  1. コンクリート床に埋設されたT型継手部分を残し、直管部分を切断して取り外す。
  2. T型継手部分の内面を目視で確認し研磨洗浄後、繊維補強+エポキシ樹脂でライニングする。
  3. 新しい直管を取り付け、アメリカなどで広く使用されている直接ジョイント「ノーハブ継手」で継手部分の管と接合。

Koji0608_01
約1年半前にライニングされた排水管でもこれだけの汚れが

「HAM―J工法」の特徴・メリット

  • コンクリート床を壊さず工事ができることから、大掛かりな機械・装置を使わず、工事の騒音振動を抑えることができる。
  • 上下階の2住戸を1施工ユニットとすることで、短期的な一斉再生(複数のユニットを同時並行に施工する)、あるいは長期にわたる段階的再生(1ユニットを個別継続的に施工する)が可能になる。また、排水系統の部分的な漏水対策が必要な場合などにも対応可能である。
  • 排水管の内面・継手部分など、施工状況を目視で確認しながら、ごみの除去・錆落とし・樹脂ライニングなどの施工ができるため、信頼性が高い工法である。
  • 排水立て管は新管、合流継手は繊維補強樹脂ライニングを施すので、施工後の排水管は建物寿命と同等の耐久性を有し、メンテナンスがほとんど不要になる。
  • 従来の更生工法と同等のコストで施工が可能で、更新工法と同等の信頼性が得られる。
  • 上下階の2住戸を1ユニットとして施工するので、標準で半日程度の時間で工事完了し、通水ができるため居住しながらの施工が可能である。
  • 「HAM―J工法」は財団法人ベターリビング(国土交通省、独立行政法人都市再生機構)が実施した「既存共同住宅団地の再生に関する提案募集」にて選定された工法である。

Koji0608_02
大規模な設備を必要としないのでコンパクトな作業が可能

快適な生活を送るために

居住者が「快適な生活」を送るためには、住まいのメンテナンスやリフォームは必要不可欠である。しかし、その工事のたびに騒音振動に悩ませられるのでは、「快適な生活」とは言い難い。

2010年にはマンションリフォーム市場は1兆円を越えると推計されているが、居住者が日常生活を送りながらリフォームできる「HAM―J工法」のような技術開発は市場規模に対してあまり進んでいない。今後、居住者の日常生活を維持したままリフォームできる技術開発がマンションリフォーム市場には望まれている。

Koji0608_03
「HAM―J工法」の作業手順

<アメニティ新聞287号 2006年8月掲載>