滞納者が行方不明となり2年経過、管理費を放棄したいが… (2003年11月号掲載)

Q.

組合員のAさんが管理費を滞納したまま、行方不明になり2年が経過しました。Aさんの居室は銀行が競売を申し立てていますが、まだ落札者は現れていません。Aさんに請求することは事実上不可能ですし、このまま放置してても、未収金が増えるだけですから、Aさんに対する管理費を放棄しようと思いますが、このようなことは出来ますか。また、放棄する場合の手続きについて教えてください。

A.

確かに、生きているか死んでいるかも分からないAさんから滞納管理費を回収することは無理でしょう。しかし、仮に不動産の競売手続きで落札者が現れれば、その者が前者の滞納管理費の支払義務を承継することになりますから、競売で落札される可能性がある限りは、回収可能性があるわけですから放棄することは出来ないと考えるべきです。

不動産の競売では最低売却価格というのが定められますが、入札者が現れなければ、最低売却価格を下げて再度入札します。滞納額がそれなりにあっても、売却価格が相当程度下がれば買う人は現れるはずです。

但し、極めて稀なケースですが滞納管理費の金額が最低売却価格を上回ることもあり得るかも知れません。この場合裁判所が評価したマンションの価値(最低売却価格)よりも支払わなければならない債務(滞納管理費)の方が高くなるわけですから、このような物件を購入する人は通常はいないので、競売手続きでは処分されなくなってしまいます。

このような例外的な場合であれば滞納管理費を免除(少しでも回収を図るため全額ではなくて一部だけ免除することも考えられます。)することで競売で買い受ける人が現れるようにすることもやむを得ないでしょう。

放棄する場合の方法ですが、法律には明確に規定されていませんので、解釈に委ねられます。Aさんの対する滞納管理費の請求権は債権というそれ自体金銭的価値を持つものです。そしてこの債権は管理組合即ち区分所有者全員のものですから、これを放棄するためには、理事会の決議等では足りずに、総会の普通決議で決めるべきであると考えます(標準管理規約では管理費を増額する場合については総会の普通決議を経ることとされていますが、管理費の免除も同じように考えるのが妥当であると思います)。

回答者:法律相談会 専門相談員
弁護士・石川貴康
(2003年11月号掲載)