悪質な滞納者への対策は? (2003年3月号掲載)

Q.

私は管理組合の理事です。組合員のAさんが常習的に管理費を滞納しています。過去に何回か6ヶ月以上の組合費を滞納したこともあり、このときは弁護士さんに民事訴訟を提起してもらいました。裁判所の判決が出ると払うのですが、また直ぐに滞納しています。何か良い方法はないでしょうか?

A.

皆さんもご承知のとおり、裁判所の判決に従わなければ強制執行を受けることになります。滞納者の中には裁判所の判決が出ればしぶしぶ支払い、それが終わればまた滞納をする悪質な者もいます。判決が出た後に支払いを受ければ、その後の滞納分について強制執行をするためには再び訴訟を提起して判決をもらわなければなりません。

そのような事態に備えてあらかじめ将来の管理費についても判決をもらうことが出来れば管理組合としては非常に便利です。では、このようなことが可能でしょうか?

民事訴訟法の135条に「将来の給付を求める訴えは、あらかじめその請求をする必要がある場合に限り、提起することができる」と規定されています。即ち、「必要がある場合に限り」例外的に認めるというのが法の建前です。では、どのような事情があれば例外的に認められるのでしょうか?

この点について東京地方裁判所平成10年4月14日の判決は「管理費等の支払いは月々発生すること、戸数が10戸と少なく1戸の滞納は影響が大きいこと、支払い拒絶の意思が強く即時の履行が期待できないこと等から将来の請求も認められる。」としています。

管理費の請求についていえば

1.戸数が少ないこと
2.支払い拒絶の意思が強いこと

の2点が重要な要素となると思われます。過去に繰り返し管理費を滞納している事実は支払いが行われない可能性を強く推測させるものと言え(2)の要素は充たすと言えます。マンションの規模が小さくて、一人の管理費の滞納が全体の管理の運営に大きな支障を与えるという事情があれば、(1)の要素も充たし将来請求が認められる可能性もありますが、最終的にはケースバイケースで裁判所が判断することになります。

回答者:法律相談会 専門相談員
弁護士・石川貴康
(2003年3月号掲載)