法律Q&A 区分所有法改正による新しい財産管理制度(2026年5月号掲載)

Q

 区分所有法が改正されてマンションや団地の管理に特化した新しい財産管理制度ができたと聞きました。どのような制度ですか。また、実際にどのような場面での利用が考えられますか。

A

 今回の区分所有法の改正で

 ①所有者不明専有部分管理制度

 ②管理不全専有部分管理制度

 ③管理不全共用部分管理制度

 という3つの財産管理制度が設けられています。

 例えば、ある居室(専有部分)がゴミ屋敷になって悪臭を出し、近隣住民に悪影響を与えている場合の利用が想定されます。

 この場合当該専有部分には誰も住んでいない。専有部分の所有者の所在を調査したが、不明である場合に①の制度の利用が考えられます。①の申立てがなされると裁判所がその必要性があると認めた場合は所有者不明専有部分管理人が選任されます。

 この所有者不明専有部分管理人の権限は専有部分だけではなく専有部分の中にある動産にも及ぶとされています。管理人はゴミを処分することができます。また、所有者不明専有部分管理人は裁判所の許可を受ければ専有部分の売却も可能とされています。ゴミを処分しても、空室のままでは専有部分は徐々に劣化していきます。所有者が不明である以上管理費等の支払いも期待できませんので、このような場合は所有者不明専有部分管理人に専有部分を売却して新たな所有者に居住してもらうことが望ましいと思います。

 ところで、①の制度は専有部分の所有者の所在が不明であることが要件とされているので、ゴミ屋敷である専有部分に所有者が居住している場合は利用できません。

 その場合は②の管理不全専有部分管理命令制度の利用を検討することになります。管理不全専有部分管理人の権限は①と同様に専有部分だけではなく専有部分の中にある動産にも及ぶので管理人はゴミを処分することができます(専有部分の売却は所有者の同意と裁判所の許可があれば可能ですが、区分所有者が売却に同意することは通常はないと思います。)もっとも、専有部分に居住している区分所有者が管理不全専有部分管理人の行おうとする管理行為(ゴミの処分等)を妨害することが予想される場合は、実効性のある管理を期待できないので、②の申立てをすることは避けた方が良いと思います。その場合は、従来から使われていた訴訟や仮処分等によって対応することになります。

 他方で、例えば区分所有者が外部に居住しており、当該専有部分の管理に無関心である場合など、区分所有者による妨害行為が想定されない場合は②の利用が検討できます。なお、ゴミがバルコニーに放置されている場合、多くの管理組合の規約ではバルコニーは専有部分ではなく専用使用権が認められた共用部分とされていることから、②の申立てだけでは足りずに、③の申立てが必要となるのではないかとの疑問も出てきますが、①及び②の管理人の権限は共用部分に関する権利にも及ぶとされており、バルコニーに関する専用使用権は区分所有者が有する共用部分に関する権利に該当することから①ないし②の申立てに加えてあえて③の申立てをする必要はありません。

 ①ないし②の申立てを管理者(理事長)や管理組合法人が行う場合は規約又は集会の決議に基づく必要があります。また、申立てに際しては予納金が必要となりますので、予算措置を講じておくことが必要です。

法律相談会専門相談員 弁護士 石川隆康(2026年5月号掲載)