建物Q&A 建設業の2024年問題とは(2023年10月号掲載)

 建設業の2024年問題で建設関係者の残業時間の制限や、週休2日制が導入され、建設工事費が高額になると聞きますが、どの位値上がりが想定されているのでしょうか?

 建設業の2024年問題と一般に言われているのは、2019年に「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」という労働環境の改善の為の法律が施行されましたが、建設業の人材不足や長時間労働が常態化し、問題解決には短期間では難しい点を考慮し、働き方改革関連法の適用を5年後の2024年4月に延期されたことです。よって2024年4月までに上記働き方改革関連法の基準に建設業界は労働環境を改善しなければなりません。

 具体的には長時間労働抑制のため「週休2日制」の導入と「時間外労働時間の月45時間且つ年360時間の上限規制」の罰則付きが適用されます。いまだ4週4休が多く、ここ数年で4週5~6休が増えてきていますが、週休2日はまだまだ少ない状況です。労働時間が抑制されるとおのずと工期が延びてきますので、発注者・受注者共に適正な工期の設定に取り組む事としています。

 この様な労働環境改善には、残業規制されても月収や年収を今まで通り維持するため労務費を上げなければなりません。また工期が延長されると仮設費(現場事務所や足場等のリース代)や現場管理費(現場監督員の人件費等)等が増加します。

 
 これらの工事費の増加について、これによって工事費全体がどうなるかは明言はできませんが、参考に国交省策定の「建設業働き方改革加速化プログラム」では、土木工事の事例として労務費を最大1.05、機械経費を最大1.04、共通仮設費を最大1.04、現場管理費を最大1.05の補正係数を乗じて計上する案を提示しています。

 また「建設業働き方改革加速化プログラム」では、この様な労働環境改善のため、工事費の増額ばかりでなく、生産性向上のためデジタル情報通信技術(ICT)の活用の推進や重層下請構造の改善や技能者の能力評価制度の構築を推奨しています。

 建設費の上昇が社会経済にどの様な影響があるかは不明ですが、車や腕時計・オーディオ機器などは高額であった事を自慢するが、建築工事は安くやらせたことを自慢する風潮がみられ、その結果、低収入・長時間労働環境下が続いているものと思われます。この機に建設業界の労働環境を改善し、新技術を導入し、多くの人が業界への参入を希望し、女性も抵抗なく建設業に携われるようになることが望まれます。

NPO日住協協力技術者 一級建築士 山田 俊二(2023年10月号掲載)