身の回りを整理しよう⑨ 保険の整理その(2)

「個人賠償責任保険」

  先月は、加入している保険を

①保証内容が重複しているものはないか、
②保証の抜けはないか

という視点で整理し、まず①について、既に公的な保険である程度保証されていることを、民間の保険で上乗せして保証することには慎重に、という内容でした。

 今月は②です。

 保険に期待することは「自分自身の老病死に関わる経済的リスクを低減してくれる、あるいは住宅等の財産が災害等で毀損された時に補償してくれる」などと思われます。あわせて「自分が他人の身体及び財産に損害を与えた時に、相手の損失を補償してくれる」ことも期待することでしょう。

 このような損害を補償するのが「個人賠償責任保険」です。

 同保険は、単独で加入するより、自動車保険や火災保険、傷害保険の特約として加入することが多いのですが、ご自身の火災保険等で、この特約が付加されているか把握しているでしょうか。

 最近は、高齢のため自動車の運転免許証を返納する人も増えているため、今は自動車保険に加入していないという人もいることでしょう。結果、個人賠償責任が抜けている可能性があります。

多額になることもある個人賠償責任

 個人が賠償責任を負う例として、マンションでお風呂の水を溢れさせ階下に水漏れ、買い物に行った際誤って商品を落として壊した等、挙げればきりもなく、補償金額も様々です。自転車を運転中、人にぶつかり、その人が死亡、あるいは重い障害が残ると、補償金額が数千万円になるケースも考えられます。

水漏れ

自転車事故

 認知症高齢者の事故も気に掛ける必要があるでしょう。数年前、認知症高齢者が徘徊し、線路内に侵入。電車にはねられ死亡した事故で、高齢者の配偶者及びその子どもが監督責任を問われ、鉄道会社から列車の遅延損害等の損害賠償を請求された裁判がありました。裁判は、最終的に被告の損害賠償責任を問わないことで結審しましたが、今後、同様の事例で、損害賠償責任を負う例も出てくると考えられます。

自転車保険加入義務化の流れも

 また、最近は、自転車事故で高額な賠償責任を負う事例が増えていることから、賠償責任に備える自転車保険への加入を義務化、あるいは加入を努力義務とする自治体も増えています(東京都は今年4月1日から義務化)。

 なんらかの個人賠償責任保険に加入していれば、自転車保険に改めて加入する必要はありませんが、万が一、自分が加害者になる可能性も考えて、個人賠償責任保険の抜けが無いか、今一度、自分が加入している火災保険等の契約内容を確認しましょう。

保険料は年間数千円程度

 多くの保険会社では、保険期間1年間、補償金額1億円に対し、年間保険料は1000~2000円程度です。

被保険者の同居家族と別居の未婚の子まで

 被保険者の範囲は被保険者本人はもちろん、その配偶者及び同居の親族、別居の未婚の子までが保険の対象となります。
 契約保険金額ですが、自転車事故では、1億円近い損害賠償責任が問われることもあるため、1億円を目安としたいところです。

複数の保険に加入しても支払いはひとつ

 なお、仮に複数の個人賠償責任保険に加入していても、重複して支払われることはありませんので、重複していた場合は、保険金額が小さいものを解約しましょう。また、仮に個人賠償責任保険を使わなければならない時、示談交渉を自分で行うのは負担となりますので、示談交渉サービスが付帯されているかどうかも確認しておきましょう。

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2020年6月号掲載)